フィリピンで100%外資で弱電・LAN配線工事や通信インフラ施工の事業を始めたい――。
そのようなご相談に対し今回は、フィリピン進出で最も合理的かつリスクの少ないルートを整理して解説します。
1. 法人設立:資本金20万ドルの100%外資「弱電施工会社」が最適
フィリピンでは現在、LAN配線工事や弱電施工だけであれば通信事業者ライセンス(CPCN)を取得する必要はありません。
そのため、最初のステップとしては
- 資本金 20万米ドル
- 100%外資の弱電施工会社
- 事業内容:LAN配線工事、弱電、ネットワーク構築など
これが最もシンプルでスムーズな進出ルートです。
2. PCABライセンスは当面不要(ただし将来に備える)
フィリピンの建設業は PCAB(Philippine Contractors Accreditation Board)ライセンス が必要ですが、外資100%企業が取れるのは Special License のみ。
しかし実務では、
- 小規模なLAN工事はPCABを求められないことが多い
- すぐに困るケースは少ない
というのが現状です。
ただし注意点もあります。
将来的に AYALAやMEGAWORLDなど大手デベロッパーの案件を受注する場合、PCABが必須になる可能性が極めて高いです。
つまり「最初は不要、だが成長段階では対策必須」という位置づけです。
3. 建築関連許可(Building Permit / Occupancy Permit)の実務
LAN配線工事でも、市役所に図面を提出する場合があります。
その際には ライセンス保有者(Registered Electrical Engineer など)の署名・シール が必要です。
そのため会社としては、
- ライセンス保持者と提携する
- 社内に資格者を雇用する
いずれかの体制を整えておく必要があります。
4. 通信自由化(Open Access法)との関係
RA12234(Open Access in Data Transmission Act)は成立済みですが、施行細則(IRR)と実務反映まで時間がかかると予想されています。
結論としては:
- 当面は弱電・LAN工事に集中
- フィリピンの税務・労務・許認可に慣れながら
- 通信自由化の実務適用を待つ
このステップが最も低リスクです。
5. 本店登記とビジネスパーミットの注意点
法人設立時の本店登記には バーチャルオフィスが利用可能 です。
しかし実際に工事を行うには、
- 資材置き場(ヤード)
- 事務所
- 工具保管スペース
などが必要になります。
ここで注意すべきは:
本店とヤード・事務所が別の市にあると、それぞれの市でビジネスパーミットを取得する必要がある。
行政手続きの煩雑さを避けるためにも、可能なら ヤード・事務所を置く市にバーチャルオフィスを設定して本店登記する のが理想です。
【まとめ】最適な進出ルート
- 資本金20万ドル
- 100%外資の弱電施工会社を設立
- PCABは当面不要(将来は対策必要)
- LAN工事を中心に実務習熟し、通信自由化のタイミングを待つ
- 本店登記地と実務拠点は同じ市に揃えると後が楽
これは、初期リスクを抑えつつ、将来の拡張性も確保できる最も現実的なルートです。