インフルエンサーに支払う費用は経費になるのか?

インボイスが無い個人インフルエンサーとの取引と、BIR税務調査で問われるポイント

インフルエンサーマーケティングが一般化した一方で、「インフルエンサーは個人なのでOfficial Invoiceを発行しない」という理由から、他の会計事務所から 「経費否認される可能性が高い」 と強く警告された、という相談がありました。その内容を、実務者向けに整理して公開します。

1. よくある誤解:「インボイスが無い=絶対に経費否認される」は誤り

まず結論ですが、サービスインボイスが無くても、経費は認められます。
税法では、「Official Invoice または 適切な証憑 Supporting Documents があればよい」と明記されています。

今回のケースのように、

  1. 業務を請け負うのが個人
  2. 公式インボイスを持たない

という場面はフィリピンではよくあります。
経費として否認されるかどうかは、「サービスの実在性」と「支払いの実在性」をどう証明するか が本質です。
そのために最も重要なのが TIN(納税者番号) です。

2. TIN、ID、サービス内容を証明する書類 ―

今回の相談でも一番強調したポイントがこれです。

【必須】TIN番号(納税者番号)

  • インフルエンサーが個人でも必ず持っている。
    もし教えてくれない場合は「999-999-999」で源泉税を納める緊急措置も可能。

【強く推奨】写真付きGovernment ID

TIN確認時の本人確認として極めて強い証拠となる。

【推奨】Service Invoice または Billing Statement(会社フォーマット)

  • 会社の住所・TIN・サービス内容・日付・金額を記載
  • オフィシャルインボイスである必要はないが、形は整えるべき
  • インフルエンサーに署名させる
  • IDを添付させる

3. 源泉税(Withholding Tax)を実施する。税率は 5% or 10%

源泉税を実施し、申告します。こうすることにより、源泉税が支払われた経費は、税務調査において源泉税の項目で審査されることになり、経費性そのものを否認する可能性が極めて低くなります。経験上、源泉税を支払っている状態で、経費性を否認されたことは一度もありません。
個人インフルエンサーは「タレント扱い」と見なされ、源泉税は以下のどちらかになります。
原則として10%の方を採用し、インフルエンサー側が「3M以下であるという宣誓書」を差し入れた場合にのみ、5%を適用します。

年間所得 税率 コード
3Mペソ以下 5% WI080
3Mペソ以上 10% WI081

※サブコン扱いの「2%」は原則使えません。
※BIRはタレント課税で見てくるので、他の源泉税率を使用するべきではありません。

4. インフルエンサーがTINを持っていない場合

これは非常に多い相談です。実態として:

  • TIN番号を取得するオンラインシステムは稼働していないことが多い
  • 住所地のRDOに並ばないと取得できない
  • 地方の人は取得が困難
  • 代行取得には交通費含め10,000ペソはかかる

そのため実務的には、

【暫定処理】TIN無し → 999で源泉税を納めておく

あとでTINが取得できたら修正。

【契約案】「TIN提出後に全額支払う」方式

支払50%:撮影完了時
残り50%:TIN提出後
などの配分が有効です。

5. 大型案件ほど「インボイス問題」が致命傷になる

相談者のケースでは、100Mペソ規模の案件で利益率6%。
インフルエンサー側にインボイスがない場合、BIRが税務調査でコストを否認してくるリスク があります。
利益率6%の案件で仕入を否認されれば当然赤字です。

特に:

  • 大規模キャンペーン
  • 複数インフルエンサーを束ねる案件
  • 代理店からの受託(マージン5〜7%)

このような案件では、インボイス問題が経営リスクに直結します

6. 企業側が取るべき現実的な対策まとめ(実務ベース)

インフルエンサーからの「ID付き Service Invoice」を回収する

Official invoice でなくてよい。

TINがあれば必ず記載させる

無い場合は999で納税→後日修正。

源泉徴収を実施する。税率は「タレント3M以上の10%」に設定する

こうすることにより税務調査において経費性を否認されることはありません。

年収300万ペソ以下である証明(宣誓書)を提出させる

BIR対策として極めて有効。

高額な支払い(50万〜100万超)はTIN Verificationを実施

高額な場合は、税務調査においても目立ちますので、念には念を入れましょう。

契約書に「インボイスが無い場合の扱い」を明記する

支払条件・必要書類を事前に明記しましょう。

8. 結局、インフルエンサー費用は経費になるのか?

経費になります

ただし、
・TIN
・ID
・署名付き書類

の3点セットがあることが条件です。

インボイスが無いから経費否認――これは誤解です。
正しいオペレーションを作れば、インフルエンサーを多数抱える企業でも十分対応できます。