フィリピンでは「弁護士の言うこと=正しい」とは限らない

先日、フィリピン現地法人の株式40%を保有する側の代理人として、取締役会に出席しました。
その場で、相手側の弁護士が“もっともらしく”語っていた内容が、実はかなり不正確だったため、逐一その場で訂正・論破することになりました。
以下は、そのときのやり取りの要点です。

AEPに関する誤り

弁護士の主張
日本人取締役A氏はAEP(外国人就労許可)を取得しなければならない。至急対応せよ。

こちらの回答
A氏は「従業員」ではなく「取締役」である。
よって必要なのは AEPではなく AEP Exclusion。
そもそも申請根拠も、要求書類も全く異なる。

👉 取締役=即AEP必要という理解は誤りです。

「観光ビザでの滞在は違法」という誤り

弁護士の主張
観光ビザで滞在するとイミグレーションで問題になる。就労ビザを取得すべきだ。

こちらの回答
フィリピンには「観光ビザ」という正式名称のビザは存在しない。
ビザ免除期間および 9A(Temporary Visitor’s Visa) において、商用目的での短期滞在は明確に認められている。
取締役としての会議出席や意思決定は「就労」には該当しない。

👉 「フィリピン=観光ビザNG」という雑な説明は非常によく見かけますが、正確ではありません。

TIN取得にビザが必要という誤り

弁護士の主張
TIN(納税者番号)を取得するにはビザが必要だ。まずビザを取れ。

こちらの回答
TIN取得にビザは不要。
非居住者であってもTINは発行される。
現在は ORUS(BIRのオンラインシステム)に必要書類をアップロードするだけ。

👉 「TIN=就労者=ビザ必須」というのも、よくある誤解です。

なぜこうした誤りが起きるのか

フィリピンでは、弁護士が万能というわけではありません。

弁護士は通常、
訴訟
契約書
会社法
など特定分野の専門家であることが多い

一方で、
AEP
ビザ運用
BIR・DOLE・イミグレの実務
といった細かい行政手続の現場運用には詳しくないケースが非常に多い

それにもかかわらず、不正確な理解を「断定的」に話す弁護士が少なくありません。

フィリピン実務で最も重要なこと

「弁護士が言っているから正しい」
「専門家が言うなら間違いない」

この姿勢は、フィリピンでは非常に危険です。
根拠法令は何か
実務上、どの役所がどう運用しているのか
実際に同様のケースを処理した前例はあるのか

👉 必ず検証すること
👉 複数の情報源で裏を取ること

これが、フィリピンでビジネスをする上での最低条件だと、改めて感じた一件でした。