PEZAに関する基礎知識

  1. PEZAの最大のメリットは、もちろん5%という法人税率の低さです。フィリピンでは、配当は10%の最終課税のみで、確定申告の対象ではありませんから、PEZA企業に利益をためて、配当で受け取れば、大きなメリットがあります。
  2. PEZAの事業には市の事業税はかかりません。市の事業税は売上げにかかってくるので、この恩恵も大きいです。
  3. PEZAはメリットも大きいが、最初は大変です。ガッツが無いならあきらめるのもアリでしょう。特に売り上げを本社側でコントロールするようなコストセンターなら、一般企業でいくのも十分ありです。
  4. PEZAを万人に勧められない理由は、①Occupancy Permitの手間と時間②報告の手間と時間③引っ越しなどの難しさです。
  5. PEZAの認可は、事業ごとに取得するものであって企業ごとではありません。一般企業であっても、ある特定の事業のみに対してPEZAを取得することも可能です。
  6. 既存企業がPEZAを取得することも可能ですが、法人税率は0%ではなく5%になると思った方がよいでしょう。
  7. PEZAの認可は、事業ごとに取得するものだから、「PEZA企業」という言い方よりも、「PEZA事業」というのが正しいということになります。
  8. PEZA事業と、一般事業が同居する場合は、物理的にも経理的にも、完全に分離しなければなりません。免税区域とそうではない区域だからです。
  9. PEZAの認定には何段階かあります。登録だけならわりと簡単ですが、Occupancy Permitを取得するのは、かなり大変です。なかには1年かかる場合もあります。
  10. PEZAを取得すると、引越しをするにも許可が要るため、かなりの工数を要します。
  11. PEZAは5年目以降は法人税率が5%ですが、計算方法が少し違います。売上げから控除できるのは直接経費だけで、そうやって算出した粗利益の5%が納税額です。
  12. PEZAは5年目以降は法人税率が5%だが、そのうちの2%は市役所へ、3%は税務署へ支払います。こういう重要なこともPEZAはわかりやすく説明をしないので、当時はどの企業も混乱状態でした。
  13. PEZAの粗利益の計算をする際、直接経費として認められているのは、直接人件費、監督の人件費、原材料費、半製品、製品の減損、生産に使用した消耗品費、燃料費、生産に使用する機械、土地、建物の減価償却費、生産に係わる部分の賃料、生産に係わる資産を調達するにあたって発生した財務費用。
  14. PEZA法人税免除(0%)は、最近はなかなか認めてくれません。IT系を見ていると、法人税5%が基本になってきています。PEZAはそのうち制度そのものがなくなるという話もあります。
  15. PEZAはレポートの量が多かったのですが、2016年から年次報告が省略され、かなりの負担が減りました。それまでは、重複した内容を、いくつも報告せねばならず、費用も馬鹿になりませんでした。

PEZAのメリット

フィリピンには、PEZAのほかに、クラーク、スービック、カガヤンなどいくつかの経済特区があり、輸出型企業に対しては税制優遇措置を付与しています。中でも最もメジャーなPEZA(ペサ)のメリットについて解説します。

制優遇措置

最初の4年間が法人税免除、5年目以降は粗利益の5%という強力な税制優遇措置です。通常の企業の法人税率が20~30%なので、恩恵は大きいです。

VAT免除制度

家賃、パソコンなど、VAT免除の書類を提示すれば、相手はVATを徴収することができないので、実質的に約12%安く、物を仕入れたりサービスを受けたりすることができます。外国からの売上しかない企業では、INPUT VATが発生しないので、支払ったVATは払ったままとなります。還付がほぼ不可能なフィリピンでは、相殺できないVATほどもったいないものはありません。

市の事業税の免除

通常企業であれば、売り上げの1%弱にあたる税金を毎年1月に、市に納めなければなりませんが、これが免除となります。

税務調査の少なさ

税務調査が入る可能性が一般企業に比べて低いことです。
最初の4年間は法人税が免除なので、仮に税務署がある取引の「経費性」を否認したところで納税額はゼロのままです。
また、VATの納付もゼロです。税務署としては、源泉徴収違反あるいはフリンジベネフィット税くらいしか指摘することが無いため、調査に来ることが少ない傾向があります。また5年目以降は法人税が5%になり、売り上げから直接経費を引いた「粗利」の5%が納税額となりますが、粗利の算出においては、
損金算入できるのは

  1. 直接人件費
  2. 監督の人件費
  3. 原材料費
  4. 半製品、製品の減損
  5. 生産に使用した消耗品費、燃料費
  6. 生産に使用する機械、土地、建物の減価償却費
  7. 生産に係わる部分の賃料
  8. 生産に係わる資産を調達するにあたって発生した財務費用

となっています。これらの費用以外は、一切損金算入が認められていません。
間接費用は損金算入しないように気をつけておきさえすれば、たとえ、間接費用の部分で経費性を否認されるような指摘をうけても税額には変化がありません。まったく税務調査が入らないとは言えないが、何を指摘されるかわからない一般企業に比べれば、リスクは低いです。

ワンストップ機能

PEZA企業は国策で誘致されているため、一般企業とは扱いが異なっています。PEZAの庁舎には、税務署、移民局、建築局の機能が集約されています。ビザの申請はイミグレーション本局まで行かなくても良いし、建築許可は市役所が審査をするのではなく、PEZAの職員が審査をすることになっています。例えば、内装工事を行う際、一般企業であれば、建築許可を市役所に提出をし、許可が下りるまで着工してはならないことになっています。市役所の建築局であれば、図面を数ヶ月放置するのが普通で、かといって、許可が出る前に着工でもしようものなら、待ってましたとばかりにやってきて、工事現場に施錠をし、多額の罰金を要求してきます。ところが、さすがの市役所の建築局も、PEZAの案件には手出しをすることが出来ません。たとえ、建築許可が出る前に着工したとしても、「なんだ、PEZAか」で終わります。PEZAの職員は、市の職員と異なり、賄賂を要求することは一切ありませんので、建築許可などの審査も、迅速では無いにせよ、市役所のように放置するようなことは無く、健全な組織を保っています。PEZA企業になるということは、いわば塀で囲まれた外国人居住区に住むようなものであり、それに対し一般企業は道路沿いの民家に住むようなものです。市役所、税務署、バランガイなどがいつ難癖をつけてくるか分からない場所で一般企業を営むことは、フィリピンをよく知る者から見ると、かなり恐ろしいものです。

PEZA企業として認められる条件

簡単に言えば

  1. 外貨を稼ぐ企業であること。
  2. PEZAが指定する工業団地やオフィスビルに入居すること。

であればよいです。自社の事業が、日本向けのサービスであれば、あとはPEZAビルに入りさえすれば、PEZA認定の取得は十分可能です。

 

PEZA認定のデメリット

PEZA認定を取得することのデメリットもあります。
1番目のデメリットは、IT企業の場合、PEZAビルに入らなくてはならない、という制約です。
PEZAビルは、グレードがやや高めで、家賃設定も割高です。また、ほとんどの床が200平米よりも広いため、スタートアップには向きません。

2番目のデメリットはオキュパンシー・パーミットを取得することの難しさです。市のオキュパンシー・パーミットよりも要求書類が多いため、オキュパンシー・パーミットを何年も取得できずに、難民化してしまう企業も多いです。オキュパンシー・パーミットを取得した後も、毎年、訪問検査があるのも特徴です。

3番目は、毎月、年度ごとの「レポート提出」でしょう。レポート自体は会計事務所などに任せてしまうことがほとんどだと思いますが、それゆえに、完璧に出せている企業は少ないです。レポートが出ていないと、nonVAT証明書の更新や、ビザの発給に支障が出ます。

このあたりが、PEZAを取得したときのデメリットです。詳しくはこちらの記事をどうぞ

登録だけでは終わらないPEZA登録

PEZA登録の流れは、若干トリッキーです。

  1. 申請書を提出
    プロジェクトの概要、今後3年間での投資予測、売り上げ予測、従業員数の予測などを記載。成果品を輸出するまでのフローを簡単に記載。この時点で、SEC登記が完了している必要はないです。ほかの許認可でよくあるように、もしSEC登記を完了していなければ申請できない規則だったとすると、PEZAが取れるかどうか分からないのに、法人登記をしなければならないことになるので、この点は、他の許認可よりも親切です。
  2. PEZAで役員会議
    提出された申請書についての審議が行われます。PEZA企業として問題なさそうだ、ということになれば「Board Resolution(役員決議書)」が発行されます。決議書には「一応、問題ないから、SEC登記を進めなさい。建物のオーナーから同意書をとりなさい。念書をいれなさい」などといったようなことが書かれています。
  3. SEC登記
    未登記であれば登記を進めます。済んだのであれば、2)に記載されたその他の書類とともにPEZAに提出します。
  4. Registration Agreement(登録における契約書)が発行されます。
    PEZA登録というのは、PEZAの役員会と、申請する企業とが、契約書を取り交わす、という形になっています。この点が、他の許認可とは大きく異なっています。
  5. Registration Agreementへの同意
    よく読み、全てのページ、全ての部数に署名をし提出します。署名をした時点で、契約書の内容に従う義務が発生します。ここに書かれた内容はたいへん重要で、ことあるごとにPEZAから「Agreement に書いてあるではないか」と言われるので、よく読み、頭に入れておいた方が良いでしょう。ある日、「契約違反だ」とPEZAに言われないようにしなくてはなりません。
  6. Certificate of Registration(登録証)の発行。

これでいわゆる「PEZA登録」は完了です。会計士事務所なども、PEZA登録といえば、ここまでしかやらないのが普通です。

しかし実際にはPEZAに対する許認可はこれだけでは終わりません。

この後、オキュパンシー・パーミットという、かなり面倒くさい許可を取得しなければなりません。オキュパンシー・パーミットとは、「その施設は、ルールに従って設計、施工されたものであることを確認したので、生産に使用しても良い」という許可のことです。内容は、市のオキュパンシー・パーミットに、さらにいくつかの書類が加わったような感じです。
このオキュパンシー・パーミットの難しさは、誰に頼んだら良いのかがよくわからないというところにあります。実際には、オキュパンシー・パーミットが未取得の状態でも、操業が出来るのですが、ことあるごとにPEZAから警告を受け、いわば「いじめら続ける」ため、いずれは取得しなければなりません。このパーミットを取得できずに、難民化しているIT系のPEZA企業は多いです。

PEZAは途中から取れるのか

この質問は、進出を考慮している企業から、必ず聞かれる質問です。

スタート時は規模が小さいので、一般のビルに小さな部屋を借り、規模がある程度大きくなった時点でPEZA指定のビルに移動し、PEZA認定を取ろうと考える企業は多いです。このように途中でPEZAを取得するということも、可能は可能です。ただし注意しなければならないのはPEZAに申請する時点で、ある程度の設備投資がなされており、PEZA取得後に見込まれる投資が少ない場合、認定が下りないか、あるいは税率0%ではなく、5%からスタートすることがあるということです。

明確なガイドラインはありませんが、例えば、IT系であれば、パソコンや内装工事などで少なくとも1年以内に1Mの投資は必要だろう。従業員の数は、3年たっても全部で5人という計画では少しさびしい。少なくとも15人くらいの規模にする計画が必要ではないかと思われます。

PEZAとの契約書をよむと、IT設備などは全て新規で購入すること、と書かれていることが多いです。
すなわち、途中からPEZAを狙うのであれば、最初のうちは投資額を抑えておき、PEZAを申請する時点で、一気に機器を購入する計画が良いです。あるいは、購入してしまった機器は、PEZA登録時に処分するか、少しだけ「こっそり」持ち込むしかないです。

また、一般企業としてスタートしてからPEZAに切り替える申請をするまでの期間は短いほど短いほどよいです。かりに、5年間一般企業として運営し、そこからPEZAの免税をください、と申請したところで、「5年間一般企業でやって来られたのなら、わざわざ免税を与える必要も無い」と判断される可能性があります。

そしてもう一つ、4年間の免税期間というのは、企業が右も左も分からない状態からフィリピンにやってきて、右往左往する期間でもあります。よって、一般企業として右往左往しおわった企業が、「本格的に軌道に乗ったからPEZAをくれ」と言っても、免税措置はくれないかもしれません。

結局、途中からPEZAを狙うのであれば、なるべく早く、なるべく投資を抑えておく、というのがポイントとなります。そのポイントさえ押さえておけば、途中からのPEZA取得は可能です。ただし、0%ではなく5%からスタートとなることを覚悟しておかなくてはなりません。

PEZAのオキュパンシー・パーミット

Certificate of Registration(登録証)を取得したら、次はオキュパンシー・パーミットを取得しなければなりません。オキュパンシー・パーミットを取得するには、市のオキュパンシー・パーミットと同じく、まずはビルディング・パーミットの申請を行います。自分の会社で内装工事を行っていなくても、申請する必要があります。その後、工事完了届「Certificate of Completeion」を提出します。受理されれば、PEZAの職員が実際に現場を訪れ、検査を行い、ようやくオキュパンシー・パーミットが発行されます。

よって、オキュパンシー・パーミットと一言に言っても、ビルディング・パーミットから一連の申請を行わなければならず、ボリュームとしては大きな許認可です。
なお、ビルディング・パーミットは事後申請をしても問題になることは無く、ビルディング・パーミットと工事完了届を同時に申請してしまうことが多いです。

これら一連の申請に必要なものは、おおむね下記となっています。

  1. 図面
    自社で工事を行ったか、行っていないかにかかわらず、事務所の建築図、電気図、空調図、弱電図、衛生図を提出します。建築図にはアーキテクトの署名、電気図には電気エンジニアの署名、空調図にはメカニカルエンジニアの署名、弱電図には弱電エンジニアの署名、衛生図には衛生エンジニアの署名がなくてはなりません。
    A3サイズとA1サイズで提出するため、お絵かきソフトで適当に書いて、プリンターで印刷というわけにはいきません。CADを使って、印刷屋でトレーシングペーパーに印刷し、青焼き図面を作る必要があります。
    すでに建設されているものを図面化するというのは、なかなか難しいものです。内装工事を行った施工業者がこの届け出を全てやってくれれば良いのですが、PEZA向けのオキュパンシー・パーミットを最後までやってくれる業者は多くはありません。誰かが施工した内装工事を居抜きで借りる場合は、そもそも施工業者がいないため、PEZAの許認可だけをやってくれる施工業者を見つけてくるか、自分で専門家を一人ずつ呼んで1枚ずつ図面を起こしていかなくてはなりません。
    建築、電気、空調、弱電、衛生のエンジニアを捕まえるのは、かなり骨が折れます。彼らはどこにも所属しておらず、フリーランスでフラフラしていることが多いため、連絡を取るのが非常に難しいのです。
    さらに彼らは、現場を見に来ても、簡単なスケッチを描く程度のことしかしてくれません。図面を清書する、という作業はやってくれないのが普通です。
    結局、1つの図面を書き、署名をもらうだけでも数ヶ月を要します。
    なお、事務所内にパントリーが無く、給水排水設備が無いのであれば、衛生の届けは不要です。ビルディング・パーミットで提出する図面には「PROPOSAL」と記入し、工事完了届で提出する図面には「AS BUILD」と記入します。
  2. データシート
    電気、設備、弱電は、データシートと呼ばれる機器数量表を添付します。なんのことはない、事務所内で使われている機器を片っ端から数えて記録するというだけのものです。たとえば、電気のデータシートであれば、何ワットの蛍光灯が何本、コンセントが何個、特殊な電気機器があればそれらの個数を全てデータシートに記入します。弱電系であれば、モデムやルーターなどの数を記載します。
    フォーマットがあるので、それに数量を記載するのみです。内容はそれほどチェックされません。
  3. 工事見積書
    内装工事に費やした金額の明細を提出します。
    自社で内装工事をしているのであれば、当然、見積書があるだろうから、それを添付すれば良いです。居抜きで借りた場合は、「エアコンしか新たに設置しなかった」、ということもあるでしょう。そういう場合はその見積書だけでよいです。この見積書の金額が申請料に影響しているようです。
    また、見積書にエアコンの代金が書かれているのに、設備のビルディング・パーミットが出ていない、というような場合は、必ず指摘が入ります。見積書とビルディング・パーミットとは整合が取れていなくてはなりません。
  4. 申請書、そのた諸々の書面
    上記3項目の他に、申請書、Secretary Certificate、テナントの同意書、工事を行っていない場合はその宣誓書、完了した場合の完了届、検査を依頼するときの検査依頼書など、他にも多くの書類を要求されます。PEZAがフォーマットを提供してくれることはないので、始めて申請するような場合、どういう書面をPEZAが欲しがっているのかわからず苦労するかもしれません。

小さなIT系オフィスであっても、5人のエンジニアを追いかけながら、PEZAから言われる書類を揃えるだけで、3ヶ月以上はかかるのが普通です。要求図面が揃うまではPEZAは絶対に申請を受理しません。受理されれば、支払いに進みます、支払いまで進みさえすれば、「あとは待っていれば下りる」というラインに乗ったという意味なので一安心です。

PEZAの指摘

IT企業に限って言えば、PEZAから指摘されることは限られています。

  1. 2方向避難
    事務所には原則として2カ所の出入り口が必要なので、1つしか無ければもう一つのドアを作れと言われます。小さなオフィスだと2つめのドアを作ることができないことがあるかもしれません。そういうときはバルコニーなどへの避難ができれば構いません。2方向避難は日本でも義務づけられています、日本では重複距離制限といって、非常階段まで2つ以上のルートを確保し、その2つのルートの重複部分の長さが何M以下でなければならない、と細かく定められています。フィリピンのPEZAでは、「2つあればよい」だけです。
  2. 座席の間隔
    背中合わせに座席を並べたとき、背もたれと背もたれの距離を900ミリ以上確保しろと言われます。狭いオフィスに高密度で技術者を詰め込むのを嫌うため、そのような指導をしてきます。ビルディング・パーミットの図面を書くときに、背もたれが900ミリ以上になるように書いておけば問題ありません。実際の検査で、「図面では900ミリなのに700ミリしかないではないか」と指摘されることはまずありません。
  3. 非常用照明と非常口サイン
    これは必ず指摘されるので、電気業者などに頼んで設置しておかなくてはなりません。
    非常用照明とは、停電時に点灯する照明のことです。バッテリーを積んでいて、普段は充電を行い、停電時に点灯するものであれば何でもよいです。50平米に1個程度必要です。商品はホームセンターに売っているのですぐに手に入りますが、配線工事が必要なので電気工事業者に依頼せねばならず、かなり面倒です。
    非常口サインは、事務所の出入り口の上に「EXIT」と書かれたサインを設置すればよいです。電照式にしろ、と言われることもあるが電照式でなくても通ることが多いです。
    他には、避難階段までの避難経路を図面にして社内に貼ること、消火器が置いてある位置に「消火器」と表示しろ、というようなことを言われます。

PEZAの実地検査

ビルディング・パーミットが受理されたら、工事完了届「Certificate of Completeion」を提出します。

「工事を無事完了しました」、という書類に、全エンジニアの署名を添付し、ビルディング・パーミットに使った図面のタイトルを「AS BUILD」に変更して提出します(もちろん、ビルディング・パーミット提出時にPEZAから指摘があり、ドアの数を増やした、というような場合はドアを増やした状態の図面でなくてはならない)。その図面にも、オーナー、各エンジニアの署名が必要なので、手間がかかります。署名の手間を省くために、ビルディング・パーミットの図面とオキュパンシー・パーミットの図面同時に作ってしまった方が良いでしょう。

受理されれば、2週間ほどでPEZAの職員が検査に来ます。検査には、4人〜5人のチームでやってくることがほとんどです。
指摘することは、消火器を置け、非常用照明を設置しろ、非常口サインをつけろ、避難経路を掲示しろ、といった、消防関係の指摘がほとんどで、それ以外の指摘がでることはほとんどありません。データシートに記載された機器の数と、実際に設置されている機器の数を比べるというようなこともありません。ほぼ、儀式のようなものです。

消火器だけは多少やっかいです。検査チームの中には、おそらく市の消防局に人間が混じっているのでしょう。必ず「この店で消火器を買ってくれ」と小さな紙切れを渡される。必ずしもその店で買わなくても、許認可には影響はありません。何色の消火器を何本買わなければいけないのかは、必ずその検査官に確認しなければなりません。消火器には赤いものと緑色のものがあり、値段が3倍ほど違います。緑色の方がはるかに高いのです。赤い方が安いからといって、赤い物を買うと、「これではだめだ、緑を買え」と言われることがあります。緑色の消火器にはさらにいくつか種類があり、これもまた値段が倍ほども違います。安い買い物ではないので、必ず購入する前に、その検査官本人に確認しなければなりません。
また、最近では消火器を床に置くのではなく、スタンドを買って目線の高さのところに設置しろ、と言われることがあります。検査官によっても異なるため、言われないこともあります。

さて、これらの指摘事項を全てクリアし、PEZAに証拠資料を提出すれば、支払いです。

ここも他の許認可と同じで、支払いまで進めば実質的に手続きは完了したようなもので、あとは、オキュパンシー・パーミットの発行を待てば良いです。
オキュパンシー・パーミットと同時に、「Permit to Operate Mechanical」「Permit to Operate Electrical」「Permit to Operate Sanitary」というような、使用許可証も発行されます。それぞれ、PEZA内の専門エンジニアが署名をするので、一度に出てこず、バラバラに出てくることが多いです。

どれも重要な証明書なので、スキャンをし、額にいれて事務所に掲示します。

PEZAにいじめられる原因

PEZAから度重なる警告を受ける企業と、全く警告などをうけない企業と、2つにきっぱり分かれる傾向があります。例えば「マンスリー・レポートが期限に出ていないので、その遅延料金を払え」とかなりのペナルティを請求された企業があります。

よく調べてみると、PEZAからたびたび警告やペナルティを受ける企業には、オキュパンシー・パーミットを取得していない、という共通点があります。ひとたびオキュパンシー・パーミットを取得すると、年に1度の検査時に、検査官はいつもニコニコ、ほとんど指摘もせずに終わることが多いです。

多くの企業は、Certificate of Registrationが発行されれば、手続きが完全に終了したと思ってしまいます。書類に、「PEZA企業として認可されました」と書いてあるのだから、それも無理もありません。いくら「Registrtion of Agreement」に書いてある、と言っても、外国人にそれを読んで、次に何をすべきか理解せよとというのは無理があります。PEZAはフィリピンの役所の中では、珍しく汚職も無く、わりと時間通りに手続きが進み、法外なペナルティを請求してくるようなところでは無いので、大きな不満は出ていないようですが、もう少しわかりやすいガイドラインがあってもよさそうなものです。