PEZAのデメリットについて

フィリピンの税制優遇、PEZAのは有名ですが、よくよく検討すると本当に有利なのかどうか微妙な点がいくつもありますのでご紹介します。

そもそも税金で有利なのか

通常のIT企業で0%税率がもらえることはほぼありません。一般的には5%です。
この5%の計算方法は、最終利益の5%ではなく、売上から直接経費を引いた、いわゆる粗利益のようなものに5%をかけて算出します。
販管費が多い事業だと、最終利益はほとんど黒字がないのに、粗利益だけが大きくて、通常の税金を支払ったほうが得だったということも十分ありえます。
また、事業開始から10年で終了ですので、軌道にのせるのに3,4年かかってしまうと、残り5,6年で終了となり、後は通常の税率となりますので、意外に短いのです。

IT系であれば売上を調整してしまうことがほとんど

IT系企業は、多くの場合、日本に親会社があり、親会社からの発注が売上の全額を占めるということが多いです。
このような場合、親会社からの発注単価を低く抑えてフィリピン側に大きな利益が出ないように調整してしまうことも事実上可能です。そうであれば、フィリピン側に優遇税制があってもあまり意味がないことになります。
親会社が通常の企業間取引の価格に比べて著しく低い単価で子会社と取引をすることは、移転価格税制上NGではあるのですが、実際には今のところフィリピンでそのような単価のチェック機能は存在しません。

割高なPEZAビル

ITでPEZAに申請するには、PEZA認定オフィスビルに入居しなければなりませんが、基本的に3割ほど割高です。
前述の税制優遇とあわせて、本当に有利なのかどうかは、細かく試算しないとわからないくらい微妙なものです。

ビザの5%ルール

PEZAビザは、ローカル従業員20人に対し外国人一人という5%ルールがあります。このため、通常の企業であれば3人でも4人でもビザがもらえたはずなのに、PEZAだったばかりにビザが出なかった、ということはよくあります。
ビザの申請先がイミグレではなくPEZAなので、手続き的には確かに楽なのですが、上限があることは知っておいたほうが良いと思います。

床面積あたりの人数にも上限

PEZAはオフィスのレイアウトにも上限があり、結局平米あたりに配置できる机の数に上限があります。
オフィスにガンガンに机を詰め込んで、経費を圧縮したいんだ、と思ってもそうは行きません。
ビル自体が、上限の人数を定めているところもあり、PEZAビルの契約をするときは要注意です。これで問題になり、結局、ビルを退去した会社さんもあります。

non VATで物品を買えないことも多々ある

PEZA企業はパソコンなどを買う時にnon VATで購入することができます。ところが、認知されていないことが多いせいか、もしくは、そもそもVATを納めていない業者が多いせいなのかは分かりませんが、non VATで売ってくれない業者も存在します。
あるいは、見積書が来たので、nonVATに修正してくれ、と言うと「さっきの見積はnonVATの価格だ」と言うような業者もあります。
Appleの製品などは日本で買うほうが安いことが多いので、2,3台であれば手で運び込んでしまうお客様も多いですが、そうなるとnon VATを享受できる経費が家賃くらいしかない、ということもありえます。

何でも管理したがるPEZA

基本的に、PEZAはオフィスのレイアウトから、購入する機器まで全て管理したがります。
これはけっこう面倒で、たとえばオフィスのレイアウトを変更したときも原則として報告義務がありますし、余ったスペースを別の事業に使うなどということは絶対に許可されません。
引っ越しも大変で、大量の書類を提出しなければならず、基本的に、事前の許可が必要という建前になっています。
賃貸契約ですから、そのようないつ出るかわからない許可を待っているわけには行きませんので、勝手に引っ越ししてしまう会社さんがほとんどですが、PEZAからはペナルティだなんだと色々と意地悪をされるかもしれません。
報告義務も多く、決算や法人税申告書を提出していても、同じ内容を別のフォーマットに転記して報告する必要があります。
今はなくなりましたが、つい2021年までは、従業員の人数を男女別で報告させられたりして、何の意味があるのだろうと思うような報告もありました。通常、男女別までは会計ソフトウェアでも管理はしていませんし、給与計算書にも男女の別は普通書きませんので、当時は面食らいました。
会計周りを外部に委託する場合でも、PEZA企業に対しては割高で請求する会計事務所が多いと思います。
本当にそこまで考慮すると、本当にPEZAが有利なのかどうかは微妙です。

脱退するのも非常に手間

これは本当に疑問なのですが、PEZAを脱退しようとすると、手続きが完了するのに1~3年ほどかかります。大量の書類が必要となります。
脱退して恩恵を失うのはこちら側なので、さっさと脱退させてくれても良いようなものなのですが、何か取りっぱぐれはないか、何かルール違反は過去になかったか、というようなことを急にチェックし始めます。
私も会社もPEZA脱退の手続きをしているところですが、13年前の取引について質問されるなどして、非常に面食らいました。
すでにPEZA登録をしたオフィスは解約済なのですが、脱退手続きが完了していないため、いまだに5%の税制が続いているという不思議な状態になっています。
別のお客様でも、やはり脱退するのに1年近くかかりました。
ちなみに、日本で一級建築士事務所の許認可を返納する時は、管轄官庁に出向いて書類を1枚出してその瞬間に終わりました。
市役所や税務署もそうですが、管轄変更のためその管轄から出る、事業をやめる、というような時、急に過去のことをチェックし始めるというのはフィリピンの行政に共通の特徴です。

特にPEZAは、優遇を与えてやっている、という意識が強いためか官僚的な手続きがやたらと多く、個人的には最後まで気持ちの良い感じがしませんでした。


お客様にも、このようなことは常に説明し、良く検討するようにお伝えしています。