Lending Company、Financing Companyの法人設立について

フィリピンでLending Company、Financing Companyを設立する際の注意事項についてです。


いわゆる金貸し業をフィリピンではLending Company、Financing Companyと呼びます。
許認可が必要な事業ですので、通常のSECでの法人登記に加え、同じSECにて許可(ライセンス)の取得が必要です。

資本金の大きさによって、これらは2つに分かれています。
RA-10881

Lending Company 資本金1Mペソ以上。外国人100%保有可。
Financing Company マニラ首都圏で営業するには資本金10Mペソ以上。外国人100%保有可。

 

外資100%が可能なので、通常のIT企業などと同じなのですが、要求書類にちょっと変わったものが含まれています。

各取締役/役員のNBI クリアランス。外国人取締役/役員は、追加の書類を提示する必要があります (イミグレのクリアランス、フィリピンのビザ、ACR カード、DOLE 労働許可証など)。

取締役が外国人の場合は、NBIクリアランス、フィリピンのビザもしくはACRカードを出せ、とあります。

NBIクリアランスは日本に居住していても取得することが可能です。フィリピン大使館に行き、申請すればその書類が本国のNBIに転送され、クリアランスが発行されます。フィリピンのコンサル会社などを使って、現地のNBIに直接申請をしたほうが早いかもしれません。
日本の警察署で取得する無犯罪証明書は不要という回答でした。

問題は、ビザ関係の書類を出せというところです。
取締役全員が外国人でもOKであり、居住しなければならないという条件も特に無いにもかかわらず、要求書類にはビザ関係の書類を出せとあります。
そもそも、これから会社を作るのでビザがあるはずもないので、そもそも卵と鶏状態になっています。

この点について、設立手続きに入る前に、SECに確認をしたところ、「日本に居住しているなら、全ての書類を日本で公証しアポスティーユを取得すればよい。NBIクリアランスは必須。」という回答でした。
ところが、実際に申請を進めていくと、「ACRカードを出せ」と言われ、「非居住なのでACRカードをカードは無い。取締役は居住していなくても設立可能なはずだ。居住要件が明記された法文を見せてくれ」と言いましたが、話は通じず、「とにかく必要書類に含まれているのでACRカードを出せ」の一点張りでした。

また不思議なことに、ACRカードというのは、観光ビザ保有者でも労働ビザ保有者でも持つことができ、観光ビザ保有者であればACRカードにTOURIST、労働ビザ保有者であればACRカードカードにはWORKERと書かれます。どうやらACRカードでありさえすれば、TOURISTでもWORKERでもどちらでもよいらしいのです。

つまり、一度フィリピンに観光ビザ(厳密にはビザ免除状態)で渡航し、最低1回の滞在延長をし、ACRカードでカードを取得する必要があるということになります。

SECに対して、元となる法文の根拠を見せろ、とやりあった所で許可してくれなければどうにもなりませんので、言われるがままにACRカードの取得を取得を進めているところです。
必要書類のリストを作ったSECの人も、特に深く考えずにリストを作ったのでしょう。

フィリピンの官庁の担当者は誰でも共通ですが、なぜそれが必要なのか、という理由を考えている人は殆どおらず、「必要書類に書いてあるからとにかく出せ、出さなければ受理しない」で話が終わります。

私の会社のスタッフも、ビザや許認可の件数は相当な数をこなしており、ベテランなのですが会社法や会計的意味を理解しているわけではなく、「とにかくそう言われたからそうしてください」という働き方をします。正論を言ったところで、公権力に対してはどうにもならないことを知っているので、それは賢いやりかたかもしれません。

この件、進展がありましたらまた記事にしたいと思います。