フィリピン人従業員のマネジメント

フィリピンの労働文化の特徴

  1. フィリピン人は、基本的によく働きます。期待通りの成果が得られない場合は、マネジメント手法を見直す必要があるかもしれません。
  2. 相手が変わらないなら、自分がやり方を変えるしかありません。国民性はそう簡単には変わりませんが、良い面を引き出すことは可能です。
  3. フィリピン人は、背中の見えないところにスイッチがあります。このスイッチを見つけて押してやるのがマネージャーの仕事です。
  4. フィリピン人の労働文化には、以下のような特徴が見られることがあります:
    -忠誠心が強い
    -組織のヒエラルキーをよく観察する
    -自分の担当領域に対する強い責任感がある
    -食事を大切にする
    -感情表現が豊か
    -新しい刺激に対して興味を示す
    -家族を非常に大切にする
    -明確な規則があれば従う傾向がある
    -社交的で、楽しい雰囲気を好む
    -活気のある環境で生産性が上がる傾向がある
  5. フィリピン人社員は、誰が組織の実質上のトップか、よく観察しています。組織内の人間関係や権力構造に敏感な面があります。
  6. フィリピン人の思考パターンは、日本の10歳くらいの子供と似ている面があります。例えば、持ち物を自慢したがる、噂話が好き、他人を羨ましがる、すぐに「不公平だ」と感じる、言い訳をする、何かをもらえる約束をずっと忘れない、などの特徴が見られることがあります。
  7. 教育システムの違いにより、特定の分野での知識や技能に差がある場合があります。例えば、数学の教育方法が異なることがあります。
  8. フィリピン人は「〜してもいい」と「〜しなければならない」「少なくとも100あればよい」という種類の理解が曖昧な場合があります。明確で具体的な指示が効果的です。
  9. フィリピン人には未来も過去もないと言われることがあります。予定も立てないし、反省・改善もしない傾向があります。現在がとても重要です。
  10. フィリピンでは、男女の役割に関する伝統的な考え方が残っている場合があります。どちらを多く雇ったほうが良いかは事業によって異なりますが、一般的には女性を中心に組織を構成したほうが、運営がうまくいく傾向があります。
  11. フィリピン人がイメージするリーダーは、仕事をせず、責任を取らず、威張り、えこひいきをするというものかもしれません。部下と一丸となって汗を流すリーダー像を作り上げるには、まずは日本人が率先して汗を流す必要があります。

フィリピンの労働文化におけるポジティブな側面

  1. 性格が明るい人が多いです。
  2. 英語を話す能力が高い傾向があります。
  3. 右脳系に非常に強い傾向があります(絵、歌、ダンス、語学、人の顔や持ち物を覚えるなど)。
  4. 指示を忠実に守る傾向があります。
  5. 記憶力が良い人が多いです。
  6. 独立心が全く無い傾向があります。これは組織にとってはポジティブな面もあります。
  7. 仕事が好きで、忙しいのを好む傾向があります。
  8. チームワークが良い傾向があります。
  9. PCなどの操作が比較的得意な人が多いです。

フィリピンの労働文化における課題

  1. 指示に盲目的に従う傾向が強く、自分で考えない傾向があります。
  2. 左脳系に弱い傾向があります(理数系、理論に弱いなど)。
  3. 自分に損害がなければ、物事に興味をもたない傾向があります。
  4. 深刻に受け止めない傾向があります。
  5. なんでも口頭で済ませようとする傾向があります。
  6. 独立心が全く無い傾向があります。これは課題となる面もあります。
  7. 超保守的で、今までと同じ場所で、同じ人と、同じ仕事をずっと続けることを好む傾向があります。
  8. 整理整頓、分類が苦手な人が多いです。
  9. 説明が下手で、何か問題が起きた時に説明をされても、こちらからいくつも質問をしないと概要がわからないことがあります。

フィリピン人男性社員の一般的な特徴

  1. 素直な人が多いです。
  2. 冗談が通じやすいです。
  3. 女性に比べて、新しいこと、クリエイティブなことが得意な傾向があります。
  4. 女性に比べて、不正行為のリスクが高い傾向があります。
  5. 女性に比べて、問題行動を起こす可能性が高い傾向があります。
  6. 女性に比べて、時間管理がルーズな傾向があります。
  7. 女性に比べて、転職率が高い傾向があります。
  8. 女性よりも感情表現が豊かな傾向があります。

フィリピン人女性社員の一般的な特徴

  1. しっかりもの傾向があります。
  2. 男性に比べて、新しいこと、クリエイティブなことが苦手な傾向があります。
  3. 不正行為のリスクが低い傾向があります。
  4. 真面目に会社に来る傾向があります。
  5. 転職率が低い傾向があります。
  6. 安定志向が強い傾向があります。
  7. 男性に比べて気が強い傾向があります。

明確な指示の重要性

  1. フィリピン人は正確な指示書(もしくはマニュアル)に従って仕事をすることを好み、判断を必要とする仕事を嫌う傾向があります。したがって随所に判断を要する高度な仕事よりも、単純作業を好む傾向があります。
  2. ルールが100個あっても、問題ありません。「ケースバイケースで判断しろ」というのが一番ダメです。どんなに数が増えてもいいから、明確なルールブックや指示書を作りましょう。
  3. 欧米企業はまず正確な指示書(もしくはマニュアル)を作ります。日本企業は指示書を作らずに「経験で判断するしかない」と言います。まずは正確な指示書(もしくはマニュアル)を作りましょう。
  4. フィリピン人社員にマニュアルや指示書、業務用のテンプレートをゼロから作らせるのは難しいでしょう。最初の数ページだけ日本人が作って、残りを作らせるならできるでしょう。
  5. iPadのスケッチアプリで、正確な指示書を図入りで作るようになってから、社員のパフォーマンスが目に見えて良くなり、成果物のチェック時間も激減したという例があります。フィリピン人のマネジメントで、一番重要なのは「指示書」です。

社内コミュニケーションの改善方法

  1. 聞き役とは、社員が言ってきたことを、機械的にトップに伝えるだけの役目です。こういう人物がいるだけで、社内は丸く収まります。
  2. アドミの社員の席の前に丸椅子でも置いておくと、社員が話をしやすいです。社員が愚痴を言いやすい環境をつくるのは、トップの役目です。丸椅子ってのは、本当に便利なので、たくさん買って、オフィスに置きましょう。
  3. その席は、社長とちょっと離れた場所の方がいいでしょう。離れたところのほうが、社員が内緒話をするのに都合が良いです。
  4. たいてい、聞き役というのは女性です。フィリピンの女性は包容力があります。
  5. この聞き役というのは、同時に「社長がめざす企業文化」を社員に説明する役割でもあります。
  6. 聞き役を通して、社員からの問題提起がトップに伝わる。その回答をまた、聞き役を通して本人に説明する。小さな問題なら、これで十分です。大きな問題なら、もっと大きなアクションが必要となります。
  7. たいていアドミが聞き役になりますが、アドミがしょっちゅう入れ替わる会社というのは、問題が多いです。問題が多いからアドミが辞め、アドミが辞めるから問題が減らないという悪循環になります。
  8. アドミを頼りすぎると、その人物が社内をコントロールし始めます。経営者である日本人にもかなりバイアスのかかった情報を流すようになります。距離感が重要です。

内部からのリーダー育成の重要性

  1. 外からくる人は、企業文化を理解していないばかりでなく、他社の企業文化を持ち込む可能性があります。ぶち壊されます。
  2. 突然外からやってきたリーダーが倍くらいの給料だと、給与バランスがガタガタになります。他の社員から、即座に不満が噴出し、不満を持った社員はすぐに辞めます。
  3. そのリーダーが使えるかどうか、5ヶ月で見極められるでしょうか?猫をかぶってると、なかなか判断がむずかしいです。苦境にさらされないと、人間の本性は出てきません。
  4. 外からくる人には、部下がついていかない可能性があります。
  5. そもそも論として、日本人の求めるレベルのリーダーというのは、この国には存在しません。青い鳥を探し続けても、時間の無駄です。
  6. 結局、リーダーは社内で叩き上げるしかありません。最初の数ヶ月は厳しいかもしれませんが、社員を教育する体制のない会社は、遅かれ早かれ撤退するしかありません。

社員の意見を聞く効果的な方法

  1. 1年に1回、全社員との面接をしましょう。とても疲れますが、効果は絶大です。一人30分以上しゃべります。社長が1対1で話をできるだけで、喜びます。
  2. 5つの要望が上がってきたとして、3つ聞いてやれば社員は大満足です。
  3. 「要望に耳を貸す」ことでほぼ目標は達成されます。ダメなのは、耳を貸さないことです。そして要望が解決されたかどうかというのは、実はあまり重要ではありません。話を聞くチャンネルを用意しておくことが重要です。
  4. 社長からの回答は明確にYES、NO、検討する。この3つのみにしましょう。この社長からの回答が、企業文化を醸成していきます。腹を決めて答えましょう。どんな些細なことでも、社員は覚えています。

社員の給与を決める方法

  1. 結局のところ、同一部門なら同一賃金で採用。過去の経験、年齢は考慮しない。これが最良の方法です。これを守るだけで、内部の不満が激減します。
  2. 最初の2、3年はポンポンポンと上昇させましょう。毎年25%くらいです。そのあとはゆっくりで構いません。そうすれば退職率が激減します。
  3. 業界の水準をちょっと超えるくらいの給与を、さっさとあげてしまいましょう。そうすると、なかなか転職できないので、長く働かざるを得ません。給与の上昇カーブは重要な戦略です。
  4. 数千ペソの給与を躊躇したばかりに3年働いた社員を失うのは、かなりの痛手でしょう。3年というと、かなりのノウハウが溜まっているでしょうし、5年6年といったベテランになると、日本人よりもはるかに高いパフォーマンスを発揮するのが普通です。
  5. 車にたとえれば、給与は性能、ボーナスは走行距離。というように、決めておきましょう。気分で決めていると、社員からの突き上げに答えられなくなります。「なぜ私は彼女よりボーナスが少ないんですか」とか言ってきます。「おまえは能力は上だが、彼女より85.5時間勤務時間が短かったからだ。」と切り返せるようにしておきましょう。
  6. 降格、減給、配置転換はフィリピンでは原則禁止です。解雇と同じ手順が必要となります。
  7. 降格、減給が禁止ということは、ポジションを与えるのに、慎重にならざるを得ないということです。この社員は、今は高性能でもそのうち性能が下がるかもしれない、もっといいのがくるかもしれない、とか考えてしまうのも当然です。ポジションを明示するときは、慎重にしましょう。
  8. 降格、減給が禁止ということは、「リーダー手当」というものを渡しはじめたら、一生、それを渡し続けなければならないということです。その代わり、「部下一人につき、いくらの手当を払う」ということにすれば、部下が0なら手当もゼロにできます。
  9. 「成果と無関係に定額に毎月渡す手当」は、既得権益となりますので、後に減らすことができません。かといってなんでも成果物や勤務時間に連動させればよいというものでもありません。悪用されて、品質の低い成果物を出し続けたり、ダラダラ残業をするやつがでてきます。手当というのは、非常に難しいのです。

日本人リーダーがとるべき態度

  1. 「フィリピン人はああだこうだ」、と評論家になってはいけません。フィリピン人労働者の傾向を知り、対策を打つ。必要なのはそれだけです。
  2. 公平性。社員によって対応を変えるのは不可です。社長がどういう判断をしたのか、全員が見ています。「えこひいきする社長」はフィリピンでは軽蔑されます。例えば、リーダー役を処分しなければならないようなときに、すごく悩みますが、公平性は最優先です。
  3. 一貫性。言ったことを、コロコロ変えてはなりません。軽蔑されます。
  4. リップサービスは不可。社員というのは、社長が言ったことを、何年たっても全て覚えています。小学生に、ゲームを買ってやる約束をしたら、いつまでも覚えているのと同じです。
  5. 即応性。社員からの問いかけには、即答しましょう。”Yes” “No” ” 検討する”この3つでよいです。
  6. 会社はフィリピン人従業員とその家族にとっては「傘」です。もしもの時には頼ってきますので、なるべく助けてあげましょう。
  7. 従業員が「家族」を持ち出してきたら、アンタッチャブルです。「家族が○○なので休みます」「家族が○○なので辞めます」というフレーズは頻出します。フィリピンでは家族は何しろ、最優先。会社はなすすべもありませんのであきらめましょう。
  8. こんなときはどうしたらよいでしょうか。「社員の◯◯が、明日、会社に子供を連れてきてよいかと聞いています。家で面倒を見る人がいないそうです」。これに対し、「OK」と答えると、家族を大事にする理解ある社長だと思われます。ただし、先例を作ることになります。「NO」と答えた場合、この会社では長く働けない、と考える可能性があります。「検討する」と答えた場合、決断が遅いと思われます。

組織作りの方法

  1. 大原則として、フィリピン人はフィリピン人によるマネジメントを嫌います。外国人にマネジメントされることを好みます。
    フィリピン人は公平性に欠け、えこひいきをする、とフィリピン人自身が思っているためです。
  2. まずは全員横一線のスタートです。日本人が直接指揮をとりましょう。リーダーは外から連れきてはいけません。
  3. 頭角を現したものをリーダーに据えます。自他ともに認める人物というのが、必ず現れます。全員からヒアリングすれば、誰が適しているかは、すぐに分かります。
  4. リーダーが決まったら、次はそのリーダーにコピー(サブリーダー)を作らせましょう。一人の人物に頼らざるをえない状況を作ってはいけません。
  5. リーダーが決まったら、リーダーを実務で疲弊させてはなりません。日本人はすぐにデキる人物を使い倒してしまうので、注意しましょう。リーダーの役割は、部下の教育が最優先で、実務はその次です。
  6. リーダーAに自分のコピーBを作らせたら、そのコピーBをリーダーにして、もう一個チームを作りましょう。これでリーダーAが辞めてもなんとかなります。組織作りとしては、ここまで来てやっと一安心です。
  7. 会社の立ち上げ期は男性中心、安定期に入ったら女性中心にしたほうが良いでしょう。
  8. 正社員にした瞬間だらける、というような話は都市伝説で、そのようなことは起きません。マネジメント能力が欠如した会社だと、そうなるかもしれません。
  9. 社員に改善や創意工夫を期待しても無駄でしょう。出来ないことを期待してイライラするより、自分でやった方が早いです。社員たちもそれを望んでいます。
  10. 組織図を必ず作りましょう。フィリピン人は組織図で動くからです。隣の部署のメンバーに命令したりするのは絶対にNGです。日本人と異なり、そのあたりはかなり敏感です。
  11. フィリピンの組織は軍隊と同じです。下からの質問は順番に上に上がり、上からの命令は、順番に下に降ります。そのルールを経営者も守らないといけません。
  12. 組織図を守るといっても、実際にはたまに逸脱した事案が発生します。その時は即座に是正しないと、徐々にチームが崩壊していきます。
  13. すぐに渉外役を作り、外部との連絡・交渉の一切を、その社員にやらせましょう。外交の世界で、事務次官レベルで交渉を行うのと同じです。そっちの方が、イライラもしないし、相手も楽だし、スムーズにいきます。
  14. 渉外役とは、こっちの言葉を相手に伝え、相手の言葉をこっちに伝えるだけの役割です。そこに自分の考えを入れ込んでくるような社員は渉外係には適しません。話がこじれるだけです。
  15. 会社を立ち上げる時は、不思議なもので、必ず優秀な社員が集まります。新しい会社というのは面倒な人間関係が無いから魅力的、という理由もあるかもしれません。有能であるが、以前の会社の人間関係が問題で辞めた社員は多くいますので、そういう子が集まってきます。
  16. ダメ社員にはダメ社員の役割があります。ダメ社員が単純な仕事をやってくれるおかげで、できる社員が高度な仕事に集中出来ます(比較優位の原則)。ダメ社員もあえて切らずに残しておくというのもアリでしょう。
  17. フィリピン人は、本来希望する分野以外で、働くことを嫌います。たとえ給料が高くなるとしても、自分が専門にしたいと思う分野以外では働きません。ですので仕事を兼務させるのは基本的に無理です。
  18. ローカルマネジャーに任せると、その人が闇の帝国を築いてしまいます。面倒でも何人かのリーダーだけは直接管理をしたほうが良いでしょう。
  19. 一人の人物に頼らざるをえない状況を作ると、「もっと給料をくれなければ辞めます」と言われた時に困ってしまいます。「どうぞお辞めください」と言うためには、リーダーに、なるべく早くコピーを作らせておくことです。
  20. 優秀な社員を探すよりも、「優秀な社員が残るような会社」を作る方が先です。そうしないと、どうせ優秀な社員を見つけても、辞めてしまいます。イマイチな会社ほど、「優秀な社員がどこかにいないか」とずっと探す傾向があります。
  21. 優秀な社員を面接で見分ける方法はありません。10人に1人くらいは、組織に突っ込んでおくと大化けするので、性格のよさそうな人物を、適当に採用してしまうというのも有効な方法です。
  22. 企業文化は、不測の事態に出会ったときにどう振る舞うかで決まります。社員が不正をしたとき、トラブルが発生した時、そういうときに経営者がどういう対応をするかで企業文化が醸成されます。

社員を指導する方法

  1. やったことを指摘します。人格を批判してはなりません。「なんでいつもおまえはこうなんだ?」という言い方は避けましょう。「これは間違っている。今すぐ直せ」と言うだけで十分です。指摘したあとは、サッパリ忘れましょう。「罪を憎んで人を憎まず」の精神です。
  2. 遠回しな言い方や皮肉を言っても伝わらないし、空気も読んでくれません。一言でストレートに指摘してください。「品質が重要だということがわからないのか?」「よくチェックしろといっただろう?何回言えばわかるのか?」というのは避けましょう。「これは間違っている。今すぐ直せ」と言えば「yes Sir」で終わります。
  3. 職場で怒鳴ってはなりません。机をドンと叩くのも避けましょう。外国人に対する威嚇として全く通じないどころか、軽蔑の対象になります。人前で社員を怒鳴ると、深刻な問題につながる可能性があります。
  4. 人前で叱るのは避けましょうが、「これは間違っている。今すぐ直せ」と言うのは、全く問題ありません。
  5. 頭ごなし、高圧的な言い方は避けましょう。どんなにポジションの低い社員であっても、話をするときは対等に話しましょう。人として尊重しましょう。威張ったりせず、普通に話すだけです。
  6. 問題を繰り返す社員は別室に呼びます。ストレートに何が問題かを伝えます。弁明をし始めたら、すべて話し切るまで聞いてください。しかし締めくくりはいつも同じです。「態度を改善してください。わかりましたか。誰が言ったか、などを詮索してはいけません。それもわかりましたか。」という具合です。
  7. 社員からの弁明には幾つかのパターンしかありません。①とりあえず否定する②体調のせいにする③家族のせいにする(小さい子供がいる、など)④リーダーを逆に非難する⑤なぜ私だけなのか?と聞く
  8. それぞれに対して、どう対応するかシミュレーションをしておいた方が良いでしょう。相手のペースに巻き込まれないようにしましょう。

社員を褒める方法

  1. 社員を褒める時は、やった仕事を褒めてください。人物そのものを褒めるのは避けましょう。例えば「君は、本当に優秀だね」と言うと、過度の自信を持ち、誰もが給料アップを期待します。特別扱いされていると勘違いする人もいます。この場合は、「この仕事はよくできていました」と言うにとどめます。
  2. 目に見えない特権階級ラインがあって、自分がどの位置にいるのか、常に意識しています。誰かがそのラインを超えないか、常にお互いが監視をしています。ラインを超えた社員は、周りの社員に批判される可能性があります。例えば、誰か一人を高く評価すると、必ずその人に関する悪い噂が流れ始めます。これがクラブメンタリティというものかもしれません。

効果的なコミュニケーション方法

  1. Yes, Noで答えられる質問をしましょう。つまりWhy〜を使って質問をするのは避けましょう。「フィリピン人特有の防衛本能」を引き出させるような質問は避けるべきです。これだけで言い訳は減ります。
  2. 悪い例:「なんでまだできないのか?昨日、言っておいただろう?」というと、帰ってくる答えは常に、「Because,…」です。「頼んでおいた、あれできましたか?」と言えば、「Not yet sir, I’ll do it now.」となり、言い訳は出てきません。
  3. それでも社員が言い訳を始めたら、「I’m not asking the reason(別に理由は聞いていません)」「You don’t need to protect yourself.(自分を防御しなくても大丈夫です)」と伝えましょう。
  4. 本当に「理由」を聞きたいときは、How come〜を使ったほうが自然です。Why〜を使うと、責められていると感じて、言い訳を始めてしまうかもしれません。
  5. 相手をまず絶対安全圏におきます。「仕事上の失敗でペナルティを課すことは無い」と先に明言するということです。「真実を知りたいだけです。」「黙っていることのほうが大きな問題になります」と説明しましょう。
  6. 状況を確認する方法を工夫しましょう。悪い例:「あなたがこれを壊したのですか?」と聞くと、必ず「No sir」と答えます。良い例:「壊れたら、すぐに連絡してください。ペナルティなどはありませんから」といえば、「Yes sir, sorry」となります。

指示する方法

  1. フィリピンではトップダウンの指示が基本です。部下の意見を聞きながらとか、気持ちを考えながら、という日本人に多いやり方はとりあえず横に置いておきましょう。日本人はこの「指示」をするのがとても苦手です。
  2. 例えば、「これ、できますか?」ではなく「これをやってください。明日までに」と言いましょう。指示される方も、その方が理解しやすいです。
  3. 指示は明確に、ビジュアルを使って、視覚的に伝えましょう。「オイルのタンクを空にしないように注意してください」ではなく「この線まで減ったら発注してください」と言いましょう。
  4. 社員に行間を読んでもらうことを期待してはなりません。行間を読んだり、読んでもらうことを期待するのは、日本人だけかもしれません。伝えたいことは、全部ストレートに言いましょう。
  5. 社員に意見を聞くのは避けましょう。改善提案がボトムから上がってくることは、ほとんどありません。あくまでトップダウンの指示をし、問題があるかどうか、様子を観察し、調整をいれましょう。
  6. 暗示的な表現を使わず、常に明示的な表現を使うことがコツです。
  7. やたら抽象化してはなりません。日本人はとにかく物事を抽象化して話すから相手に伝わりません。それとは逆に、徹底的に具体化、即物化して説明しましょう。伝わらないのは、相手が悪いのではなく、言い方が悪いのです。
  8. “Do A, not B” (Aをやってください。Bではありません。)これだけで間違いが減ります。
  9. “Do you mean A or B? (あなたの言っているのはAですか?それともBですか)これだけで、質問の意図がよく伝わります。
  10. “Write to me or talk to me” (書面で書くか、直接私に話しかけてください)。2つの選択肢のどちらかしかないことを明示します。
  11. “Approval Basis” (認めるかどうかは、その時々で、私が決めます)。従業員に何かを頼まれたときに便利なフレーズです。「その都度その都度判断します」という意味です。
  12. “For example,….”(例えば、こういうことです)”Meaning,”(つまり、こういうことです)このように、具体的な会話を心がけましょう。
  13. “Maybe…” “I think…”などのあいまいな表現は使わないようにしましょう。言われた方も困ってしまいます。社員が待っているのは、感想や意見ではなく、指示です。
  14. 「なるべく早く」ではなく「48時間以内に」という具体的な表現を使いましょう。

社員の評価をする方法

  1. 社員の評価には全員との面接が一番です。口頭で、リーダーには部下を、部下にはリーダーについての評価をさせます。数人に話を聞くだけで、かなり正確な評価を形成することができます。双方向から聴くことが重要です。
  2. 「面接であなたが話した内容については、秘密を厳守する」と、最初に宣言しましょう。これだけで、社員は驚くほど多くのことを話します。
  3. フィリピン人リーダーに部下の評価をやらせるのは、ほとんど意味がありません。全員に◎か◯の評価しかつけないからです。恨みをかうのを嫌うし、友達には◎をつけます。評価をされた方も、必ず不満を抱き、変な噂をし始めます。ただ、部下の一人ひとりについて、どんな子なのか、と聞けば色々教えてくれます。それを聞いて、日本人であるトップが全員の評価をつけるのが一番、平和です。

社員が好む会社とは

  1. フィリピン人に会社を選ぶ上で重要なのは①仕事のやりがい②人間関係③給与。どの国でも一緒です。かなり総合的な判断をしていると思った方がよいでしょう。
  2. 法定の13ヶ月ボーナス以外にEXTRAボーナス出すと、その効果は絶大です。まだまだそういう会社は少ないです。社長が自由に使えるムチとしても、大変有効です。
  3. マネジメントとのコミュニケーションが良い会社は好まれます。俗に言う、家族的な雰囲気と呼ばれるものです。グループで食事をするなどは、コスパが高いですが、深い話はできません。
  4. 細かいことにうるさくない会社というのも好まれます。居心地が良いからでしょう。お金を貸してくれる会社は、フィリピン人への理解があると見られポイントアップです。
  5. 社内規定が明確な会社は好まれるます。ルールがその時その時で変わったのでは、社員もやりにくいからでしょう。念のため、労働法規を遵守するのは、基本中の基本です。
  6. 将来的な展望がある(日本で働けるかもしれない)というのも喜ばれます。辛抱強く、チャンスを待つでしょう。
  7. 労働環境が良い。立地が良い。施設が良い。というのも喜ばれます。フェイスブックやインスタグラムで友達に自慢できるような会社は好まれます。
  8. 何事にもケチな会社は嫌われます。

フィリピン人は防御9割、攻撃1割

  1. フィリピン人の踏み込んではならない領域に踏み込むと、猛烈な反撃をしてきます。労働者の権利、人としての権利、既得権益などを奪おうとすると、危険です。
  2. 例えばローカル企業と競合になり、相手の利益を奪うようなことをすると、大変な目にあうかもしれません。踏み込んではならない領域に踏み込まないように注意しましょう。
  3. 反撃に転じるまでは、みんなニコやかです。ところが攻撃に転じると、実に恐ろしい人たちです。日本人にとってはアウェイですので、勝ち目はありません。

その他

  1. 社内旅行に行くと、翌日は多くの社員が休むか、半休をとります。みんな最初からそのつもりで寝ずに遊びます。行く前に警告しておくのも良いでしょう。
  2. 大切な書類の原本がどこへいったかわからなくなると、絶対に出てきません。全員が「自分は関係ない」と思っています。困るのは社長だけです。
  3. 社員に会社からお金を貸すのはおすすめです。上限は月給程度。返済は分割で給与天引き。利子なし。正社員のみ。いままで何十人にも貸しましたが、取りっぱぐれは一度もありません。退職率も下がります。
  4. 社員が金を貸して欲しいというときの理由で多いのは①学費②医療費です。どちらも直接学校や病院あての小切手で貸し付けたほうが良いでしょう。会社から借りた金で、親戚から借りた金の返済に充てる社員も多いです。
  5. 退職率を計算してみましょう。年間5%程度なら優秀です。中には25%なんてところもありますが、4年間で一回りですので、ノウハウの蓄積は困難でしょう。退職率は低い会社と高い会社とに、二極化する傾向があります。

結論

  1. フィリピンの労働環境には、日本とは異なる独特の文化や慣習があります。これらを理解し、適切に対応することが、ビジネスの成功には不可欠です。
  2. 明確なコミュニケーション、公平な態度、適切な評価システム、そして従業員の権利と文化的背景の尊重が重要です。
  3. ただし、これらの観察や提案は一般的な傾向に基づいています。個人差は大きいので、常に柔軟な対応が必要です。
  4. 最終的には、相互理解と尊重に基づいた関係性を築くことが、フィリピンでのビジネス成功の鍵となります。
  5. 文化の違いを障害ではなく、むしろ機会として捉え、両文化の長所を活かすことで、より強力で効果的な組織を作ることができるでしょう。