日本の公証・認証・アポスティーユとは

公証とは、私文書に記載されている作成者の署名や記名押印が、本人によって作成されたものに間違いありません、ということを公的機関である公証人が証明することをいいます。
アポスティーユとは「外国公文書の認証を不要とする条約」に基づく付箋(=アポスティーユ)による外務省の証明のことです。提出先国はハーグ条約締約国のみです。フィリピンはハーグ条約締結国です。

ノータライズとは、日本でいう「公証」で、「作成者の署名又は記名押印のある私文書について、文書が作成名義人の意思に基づいて作成されたことを公証人が証明する」ことを言います。

このノータライズは「署名がなされた国で行うこと」が大原則です。フィリピンで署名行為を行ったのであれば、フィリピンでノータライズし、日本で署名行為を行ったのであれば、日本で公証を受けなければなりません。

どのような時にこの「公証」が必要かというと、フィリピンで何かの手続き、例えば会社の登記であるとか、株式の譲渡であるとか、不動産の売買など、重要な契約を行うときに、ほぼ100%、契約相手や役所から”Notarize” “Apostille” “Consulate”せよと言われるときがあります。
これら、”Notarize” “Apostille” “Consulate”はほぼ同じ意味で、要するに日本で公証役場に行き「外国向け私文書の認証」を行ってください、という意味です。

そこで居住地の近くの公証役場を探したり、「私文書認証ってなんだろう」と調べ始めるわけですが、WEBで手に入る公証に関する記事は、法律の世界ということもあり用語が非常に難解で、何度読んでも結局なんなのかわからずに終わることが多いです。私の場合もそうでした。自分でやってみるまで、良くわからないのです。

認証には大きく3通りあり、どちらのパターンで行くのかをまず自分で考えなくてはなりません。

  1. 代理人証 署名をする人(Aさん)から委任状をもらい、その代理人として自分が公証役場に行って認証を行う。この場合、認証される署名はAさんの署名です。
  2. 面前認証 証明をする人(Aさん)が直接公証役場に行き、公証人の目の前で文書に署名をし、その署名に対して公証人が真正であると証明する。
  3. 宣誓認証 文書の作成者が、「内容が真実であること」を宣誓した宣誓文書に署名をし、その署名に対して公証人が真正であると証明する。

さて、日本の法人の登記簿をノータライズしろと、フィリピンの税務署に言われた場合はどちらの認証になるでしょうか。日本の登記簿にはそもそも署名というものがありませんので、3のパターンとなります。したがって、登記簿をDeepLなどを使って英訳し、「この英訳は私が行いました。英文は正しいです」という宣誓書を作成し、英訳者が公証役場へ行き、公証人の面前でその宣誓書に署名をすれば、英訳者の署名が認証されます。下の画像がそのサンプルです。

日本のNotarizeのサンプル画像
日本のNotarizeのサンプル画像2

フィリピンの公的機関では、これで通ります。

非常に興味深いのが、「公証人は英訳が正しいかどうかなどは一切チェックしない」ということです。公証人は英訳の内容の正当性を証明しているのではなく、英訳者がもちこんだ「この英訳は私が行いました。英文は正しいです」という宣誓書になされた署名が、本人のものであることを証明しているに過ぎません。仮に、トヨタの法人登記簿に、ユニクロの法人登記簿の英訳を添付したとしても認証は受けられます。
そんなものでフィリピンの公的機関で通用するのか?と疑問に思う方もいると思いますが、これで通らなかったことはありませんし、これ以外に方法がないので仕方がないのです。

別のケースで、フィリピンにおける賃貸契約書に署名を行い、それをノータライズせよと言われたらどうでしょうか。
この場合は、そもそも元となる日本語の文書が存在しませんので、必然的に1か2のパターンになります。
賃貸契約書に署名をした本人が直接公証役場へ出向くか、誰かに委任状を書いて代理で行ってもらうことになります。
代理人に行ってもらう場合は、この代理人は単なる「書類を運んだ足」なので、認証された文書には名前は登場しません。認証される署名対象は、賃貸契約書に署名をした本人の署名となります。

また別の例で、フィリピンの公的機関から、頻繁に「Board resolution」を出せ、と言われることがあります。Board Resoltionとは取締役会議議事録のことです。
この場合、パターン1かパターン2か、どちらになるでしょうか。
法人がフィリピン法人であれば日本語の取締役会議議事録が存在することは不自然ですので、英文のBoard resolutionを作成し、署名し、パターン1で認証を行います。
法人が日本の法人であれば、普通は日本語の取締役会議議事録が存在するはず(なければ作成する)ですので、パターン3となります。すなわち、「日本語の取締役会議議事録」+「それを英訳したもの」+「この英訳は私が行いました。英文は正しいです」という宣誓書で1セットとなります。

パスポートの認証はどうでしょうか。頻度は多くありませんが、フィリピンの金融機関の場合、パスポートのコピーだけでは不可で、Apostilleしろ、と言われることがあります。繰り返しますが、”Notarize” “Apostille” “Consulate”は現実的にはすべて同じ意味です。
この場合は、パスポートの原本とコピーされた紙を公証役場に持ち込み、「このコピーはパスポート原本と相違ありません」という宣誓書に署名をすると、認証を受けることができます。この場合も、公証役場はそのパスポートが正真正銘真正なものかどうかを証明しているわけではなく、「このコピーはパスポート原本と相違ありません」という宣誓書を認証しているに過ぎません。非常に不思議な感じもしますが、これで金融機関は受け付けてくれます。

コロナ禍になり、外国人がフィリピン国外で署名をするケースは非常に多いと思われます。日本での認証は、業者や弁護士に依頼することもできますが、理解していないと何を求められているのかがよくわからず、大変な手間になってしまうことがあります。一度、自分でやってみると非常に簡単であることが分かりますので、ぜひ挑戦してみてください。