内装工事に関する失敗

内装済みのオフィスを居抜きで借りるようなケースは、あとで苦労することがほとんどです。

「そのまま問題なく使える、営業許可も大丈夫。」と、誰もが言うので、安い買い物だと思って借りてしまうのですが、フィリピンは日本と違い、内装工事であっても確認申請と竣工検査済証が必要です。前の使用者が、よっぽどまじめな会社でない限り、検査済証を取得していることはありません。
この場合、居抜きで入居した人が検査済証を取得しなければなりません。
図面を起こし、エンジニアの署名を集めるなど、膨大な手間と時間がかかり、難易度が非常に高いです。

「借りているオフィスビルの水道管が破裂し、水浸しになってしまった。ビルは、下請けの工事業者の責任だといい、下請け業者は、水道管を供給した資材業者が悪いと言い、結局、誰も責任を取らない。全て自費で内装の修理をせざるを得なかった。」というトラブルもありました。
「停電してもジェネレターが稼働するから業務に影響が無い、と謳っていたビルで、実際には発電機が稼働せず、数日間、業務が出来なかった」、という話も聞いたことがあります。

新規に内装工事を行う場合は、価格だけで業者を選択すると偉い目にあいます。
工事業者というのは、仕事があるときに職人を寄せ集めて、終わったら解散してしまうような零細企業が殆どです。契約金額の90%まで払い込むと、相手にとっては「終わった」という感覚らしく、突然連絡が取れなくなることが多いです。工事の手直しをしてもらいたい、と思っても連絡が取れないし、残り10%の支払いも取りに来ない。仕方なく、別の業者を呼んで手直しをするはめになります。
工事を行ったメンバー自体が、解散してしまっているのです。

建築確認申請・検査済証などの許認可をきちんと最後まで完了できない業者も多いです。
最初の見積書に、ある工事項目が含まれているのか・含まれていないのか、というのもほとんどの契約で論争になります。

設計や工事の品質は例外なく低いでしょう。
施工図は作成せず、簡単なスケッチのみで工事を行います。日本から見れば「出たとこ勝負」の工事です。
間違ったエアコンの設置方法、吸音しない会議室の天井、開いたドアの陰になって押せない位置に取り付けられたスイッチ、構造的に強度が不十分な本棚、3ヶ月で壊れるドアノブやヒンジ、沓(くつずり)など。それらを指摘して、すべて無償で直してくれる業者もあれば、直すたびに、「誰がコストを負担するか」で揉めてしまう業者もあります。
飲食店などの工事では、見積書とは異なった二流ブランドの換気ファンが設置された、というようなことがよくあります。
文句を言ってもお金を支払ったあとであれば、まず取り合ってくれないでしょう。

 

この記事は2014年頃に作成したものの転載です。物価、時代背景などは当時のままですのでご了承ください。