労務上の失敗

会社内部のマネジメントは、コンサル任せに出来ない分、一般的には苦労することが多いです。

募集と採用。

社員を募集する広告を出すと、応募はたくさんくるのですが、いざ面接や試験の日になると10%くらいの人しか来ません。そして、まったく分野違いであっても応募をしてくるのが普通です。

採用を決定し、トレーニングを完了しても、数日たつと、突然出社してこなくなることが多いです。周りも平然としたもので、「あいつ、もう来ないですね」で終わりです。全く前触れもなく消え、周りも平然としている光景をみて、私も若いころは、衝撃を受けたものです。この国の人は、仕事が欲しいのか欲しくないのか、よく分からないと感じるときがよくありました。

遅刻と欠席の多さ。

遅刻と欠席の多さにも驚くでしょう。日本では考えられないような理由で簡単に会社を休みます。従業員が20人いると、全員が出社するのは年に数回しかありません。

病欠。

フィリピン人は20代からすでに成人病のデパートです。高血圧、糖尿病、肥満。フィリピンにいると、日本人がいかに健康であるかを痛感するでしょう。

解雇。

正社員の解雇には、細心の注意が必要です。うっかり手順を間違えば、不当解雇だと労働局に訴えられ、その事態収拾のために、膨大な手間と時間を費やされ、実務どころではなくなります。
社員に対する警告書に日本人が署名をしたら「なぜ労働ビザを持っていない日本人が、こういった書類に署名出来るのか。不法労働としてイミグレに報告する」と脅されたという話もあります。
フィリピン人というのは、関係が良いうちはよいが、一旦こじれると、瞬間的に危険な存在へと変化します。あのにこやかな笑顔からは想像もできないでしょう。

就業規則。

就業規則の作成にも地雷が多いため注意が必要です。
『退職時には、会社は社員に理由を問わず、退職金を払わなければならない法律がある』とフィリピン人のマネジャー社員に言われ、それを信じてそのような社内規定を作った。よく調べたらそのような法律はなく、就業規則から削除しようとしたら、『従業員に不利になる変更は禁止だ』と言われた」
なんていう笑えないケースもあります。もちろん、社員側の理由で退職した場合に、退職金の支払義務はありません。

ローン。

給料の前払い、ローンの申し出は日常茶飯事で、フィリピンの文化と言っても良いでしょう。
また、SSSなどの社会保障事務所に何ヶ月か掛け金を払えば、社会保障事務所からお金を借りることができるのですが、この事務処理がまた煩雑です。会社にとっては、よけいな手間が増えるだけで、何のメリットもありません。

不正行為。

出勤記録の改ざん、事務社員による社会保障費の着服、業者へのキックバック要求、飲食店での食材の持ち帰り、小払い現金の着服などは、よく耳にする不正行為です。卒業してもいない大学名を記載した、虚偽の履歴書を持ってくる者もいます。

離職率。

会社への定着率が低く、一般的には2年以内に多くの社員が辞めてしまいます。
自分の会社が5年、6年と続くうちに、取引先の担当者は3回くらい入れ替わるのが普通でしょう。

規律問題。

会社のルールを守らない。会社の備品を持ち帰る、壊す、紛失する。執務中のネット閲覧や、度を過ぎた携帯メールの使用、食事をとりながらの執務など、執務空間の光景は日本とはだいぶ様子が異なります。

給与問題。

給与や手当の計算方法に対しては、一般的にフィリピン人はかなり細かい点にまで質問や意見を言い、思い通りにならないと、強い不満を抱きます。労働者の権利は明確に主張します。また、秘密であるはずの給与も、公然の秘密であるのが普通で、「他人の給与に比べて自分の給与が低い、評価の基準は何なのか」、などと自分の給与に対する不満を、はっきりと表明してきます。

 

この記事は2014年頃に作成したものの転載です。物価、時代背景などは当時のままですのでご了承ください。