クラブメンタリティとは

フィリピンに関わったことがある方なら一度は聞いたことがあるであろうクラブメンタリティという言葉についてです。

クラブメンタリティのクラブとは”蟹”のことで、穴から這い上がろうとする蟹の足を、他の蟹が引っ張って穴から出させまいとする、フィリピンでよく見られる集団的な心理状態のことを言います。

私自身フィリピンに2007年から会社を経営する中で、このクラブメンタリティらしき行動に遭遇したことは覚えているだけで4回あります。

クラブメンタリティのきっかけは、ある優秀な従業員が頭角を表し、トップである私から認められた時から徐々に発動します。
例えばある社員Aには、抜きん出た実力やリーダーシップがあり、チームリーダーになったとします。
最初の1,2年は下の者もAと仲良くやっているのですが、段々と下の者がそのAを見る目が変わってきます。
例えば、Aの私用電話の時間が長いとか、休憩時間が長いとか、下の者との接し方が威張っているとか、Aは簡単な仕事ばかりして下の者に仕事を押し付ける、などの不満を、複数の者が感じ始めます。
その中で代表して誰かがトップである私に、「みんなAに対して不満を持っている」というようなことを伝えます。たとえ不満を感じている者が3人であっても必ず「全員が」という言い方をします。
その渦がだんだんと大きくなり、やがてAもそれを感じ、会社にいづらくなりAは退職します。

リーダーのAがいなくなり、みんなスッキリするのですが、組織ですから誰かがリーダーに任命しなくてはなりません。今度は社員Bが頭角を表してきたので、やがてBを新しいリーダーにします。

起きることは同じです。下の者がBの態度に不満を持ち、やがてBも退職します。
以降、その繰り返しです。

私は会社の代表であり、外国人なので、私の眼の前では誰もそういった態度を見せません。本当にAやBの態度が悪いのかもしれないし、そうでは無いかもしれない。真実は全く分かりません。

共通するのが、代表者である私が、ある人物を高く評価すると、それを本人も周りも敏感に感じ取り、亀裂が発生し、その亀裂がどんどん大きくなるということです。
かといって、全員がフラットな組織のままにするわけにもいかないですし、高く評価される人物は実際に圧倒的なパフォーマンスを発揮するのは事実です。上から見れば、どの人物が秀でているかは明らかであっても、従業員目線では、そこまで歴然とした差があるようには見えないため、「あいつだけヒイキされている」というように感じ、妬みを感じるようになるのではないかと思います。

つい最近も、このクラブメンタリティが発動しました。
さすがにこのクラブメンタリティに嫌気が指している私は、ターゲットとなっている人物のどういう点が優れていて、他の社員のどういう点がダメなのかを実名と具体例を挙げて反論しました。そして最後に「文句があるならお前たちもそれくらいできるようになってから言え」と強い口調で言いました。

とりあえず静かにはなりましたが、こんなことで解決するほど簡単ではないでしょう。
結局、下の者が複数名退職してもリーダーさえいればすぐにチームは作れる!と腹を括るか、もしくは、下の者に辞められては困るので、ターゲットとなっている人物に、下からどういった不満が出てきているかを伝えて改善を促すのどちらかしかありません。しかし多くの場合、上は上で下に対する多くの反論材料を持っています。溝を埋めようと思ったのにかえって溝が深まるだけ深まって、結果的にリーダーが孤立し、退職するという確率のほうが高いです。

14年経営する中で、私の会社は退職者もほとんど出ず、10年以上勤務しているものが3割ほどと、平均よりはマネジメントはうまくいっていると思っていますが、このクラブメンタリティだけはどうにも解決策がありません。

何か良い手があれば教えてください。