言うからわからない

この記事は2003年頃(35歳のとき)に書いたものの転載です。物価、社会情勢等は当時のままですのでご了承ください。

●「なんだこれ、全然言った通りに出来てないじゃんか!なんで俺の言う通りに出来ないんだろな 、ああ、ちくしょう!」と雄叫びをあげる日本人が多いのではないかと思う。
これは言った通りに出来ないフィリピン人も悪いかもしれないが、口で言って説明しようとした日本人にも責任がある。
「言ってもわからない」のではなく「言うからわからない」。
では、どうやって理解させるかというと、「やってみせる」。そして、次に「やらせてみる」
これだけで、理解度は格段に違う。「今日は文章で説明しないぞ!」というくらいの決意でやる。
ついでに言ってしまえば、相手のやったものを「そうそう!」と誉めれば、相手はもう一生その手順を忘れない。人間というのは、誉められたことは脳みそに摺り込まれてしまい、一生忘れないものだ。

●「やって見せ、いって聞かせて、させて見せ、ほめてやらねば人は動かじ」と言ったのは山本五十六である。この言葉は、部下を使う上での真理を突いている。

●以前、新しいプログラムの使い方を教える講師として、東京からTさんという社員が出張にやってきた。フィリピン人にとって、講習がわかりやすかったらしく、大変に人気があった。英語はブロークン・イングリッシュだ。
他の講師とどこが違うのだろうと思い、あるスタッフに聞いてみると「ミスターTは説明をおおまかにした後、全員のパソコンを巡回して、そこでもう一度ハンズ・オンで教えてくれるのでいい」とのことだった。
つまり、眠たくなるような説明は適当に切り上げて、手を動かさせたことがよかったわけだ。(フィリピン人は5分以上の話を聞くとちょっと眠くなる)

●特に日本人と言うのは言葉で表現するのが好きな国民なようで、絵で書けば数秒で終わることを、全て文章で説明しようとする人が結構多い。
建築図面の変更の指示を、びっしりと文章で書いてくる人がたまにいるのだ。「X3通りの東側の壁を200移動し、SD15の建具を廊下(3)の方向へ300移動してください」という調子だ。

●駐在員の机には、A4大のメモ用紙とペンを常に置いておく。ローカルスタッフが業務のことで質問に来たら、その紙とペンにすっと手を伸ばす。あるいは、すぐに席を立ち上がって、その問題が発生している「現場」へ直行する。(現場というのは文字通り現場であることもあるし、パソコンの画面だったりということもある)
そのいずれかを心がける。

【おすすめ本】
海外勤務・成功の秘訣―外国人と働くツボ 伊藤 久【著】1,800(税別)
まだ読んでいるところですが、5年も海外にいて、この本を知ったのはつい先月でした。海外勤務者が読んでためになる本は、これが初めてではないでしょうか。それにしても著者の海外15年とはうらやましい限りです。
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電気のエンジニア出身で、40年勤務する間に合計5回、延べ約15年の海外勤務を経験した著者の異文化体験をまとめたもの。公私にわたるさまざまなカルチャー・ショック体験を通じて、異文化環境の下に育った人たちの行動のパターンが、いかにわれわれのそれと異なっているかと、海外事業所に日本式の経営手法を定着させるための苦労話や失敗談を紹介