許認可にコネを使うことについて

フィリピンで事業を行うために必要な許認可を取得するのに、全てをコネと賄賂で進めていくこともできるだろうし、正当なやり方で進めていくこともできます。
事業を開始する際は、最初に、自分がAコース(正当なやり方)で行くのか、Bコース(コネと賄賂)で行くのかを決めなければなりません。

具体的に、下記のような内容です。

Aコース

  1. 必要な許認可を全て取得する。
  2. 許認可の取得の際に、コネを一切使わず、一般の窓口から手順を踏んで行う。
  3. トラブルが発生しても、有力者のコネを使わずに、一歩一歩地道な解決を目指す。
  4. 税務において、売り上げなどを正しく記帳、申告し、納税する。

このように、正当なやり方で進めて、道の真ん中を通るのがAコースです。

それに対して、

Bコース

  1. 面倒な許認可は、最小限のみ取得し、面倒なものはコネを使い、取得せずに済ませる。
  2. 許認可取得の際には、コネを持っているという人に一任し、書類の管理なども任せる。
  3. 税務においては、最初から正しく申告をせず、何かあれば、税務署の職員に金銭を渡すことで解決を図る。
  4. トラブルがあった場合も、コネを持っているという人に一任する。

というのがBコースです。

結論から言うと、長く事業を続けたいのであれば、Aコースで行くしかありません。
その理由として、つぎのようなことがあげられます。

  1. 許認可には多くのポジション・多くの部署の決済が必要である。ある部署の誰かを知っていても、隣の部署に力が及ばなければ、そこで書類が止まってしまうので、結果、たった1人のコネを持っているだけでは、思ったほどの効果は無い。かといって、全部の部署に横断して影響を与えようとすると、金銭を渡す相手がどんどん増えてしまう。もしくは、より有力者のコネが必要となり、その後のしがらみが増える。
  2. 選挙などでトップが入れ替わると、その下の重要なポジションのスタッフも入れ替わることが多く、期待したコネが突然、丸ごと消滅する。
  3. コネがあるからといって、提出しなければならない書類を提出せずに済ませることは、至難の業であり、せいぜい、時間がかかる処理を速く済ませる程度の効果しかない。(何も書類が出てなければ、許可をおろす側も、署名をすることすら出来ないためである)結局、コネを使ったつもりが、一通りの書類を用意することになり、何のためにコネを使ったのかよくわからない、ということになる。
  4. 許認可においては、そのときだけうまくやり過ごせても、税金・ビジネス・パーミットなどの年次手続き、ビザ申請、法人の住所変更などを契機として、何度も関係官庁の証明書の提出を求められる。そのため、「本来無くてはならない書類」を提出せずにすませて、事業を長い年数にわたって続けることは、ほぼ不可能である。
  5. コネを使うことにより、余計なしがらみが発生する。相手から、断りにくい依頼、例えば、「俺の知人を社員として雇ってくれ」「金を貸してくれ」「知り合いの業者から納入してくれ」などというようなお願いが来るかもしれず、面倒である。
  6. 許認可において、コネを使用しない正面からの手続きは、日本人が思うほど、難しくはない。また金銭を要求される場面は、一部を除き、ほとんど無い。つまり、本来、全くコネが必要ではないような簡単な許認可であるにもかかわらず、「コネを使ったから出来た」、と思い込んでしまうケースが多い。例えば新規の税務署登録のような手続きは、数日で完了できる簡単な手続きであるが、その申請にわざわざコネを使って、金銭を支払う人が多い。特にフィリピン人は、わざわざコネを使うような場面でも、コネを使うのが好きである。
  7. AコースからBコースへの変更は簡単(というよりも、気をつけていないと自然にBコースへと墜ちてしまう)が、BコースからAコースへ戻るには、過去の書類を正常に戻さなければならず、不可能に近い。

フィリピンに出てくると、いろんなフィリピン人と出会い、そういったフィリピン人は必ずこう言うでしょう。

「私は、市役所に知り合いがいるから、全部任せろ、ダイジョウブ」
「私は、税務署に知り合いがいるから、全部任せろ、モンダイナイ」
「私は、イミグレに知り合いがいるから、全部任せろ、ノープロブレム」

日本人に執拗に声をかけてくるような階層のフィリピン人は、基本的にBコースです。
しかしもっと上流の富裕層になれば、不思議なことに、ほとんどがAコースしか選択しません。
富裕層にもなれば、コネなどいくらでもあるのだが、そういったコネは、もしもの場合にしか使わないのです。
多くの日本人は、慣れないフィリピンの地で頼る人もいないため、近づいてきたり、知り合いになったりしたフィリピン人の言葉を鵜呑みにしてしまいがちです。
ダイジョウブと言うフィリピン人が、ダイジョウブであったためしは無く。任せたはずが、いくら待っても許認可が取得出来ず、調べてみると、状況はぐちゃぐちゃ、渡したお金もどこかへ消え、結局、日本人に一から許認可取得をやってもらう、というようなケースもあります。

 

この記事は2014年頃に作成したものの転載です。物価、時代背景などは当時のままですのでご了承ください。