源泉徴収に関して知っておかなければならないこと

源泉徴収の税率

フィリピンでは多くの支払いが源泉徴収の対象になっており、細心の注意を払って支払いを行う必要があります。

  1. 源泉義務者は「支払い者」ですので、支払いを受ける側(業者)が理由をつけて源泉徴収を拒否した場合であっても、最終的に源泉徴収義務を負うのは支払い側(当局へ説明し納得させるのは支払い側)ですので、安易に業者側の言い分に従わないよう、注意してください。
  2. 徴収した源泉税の支払いは、徴収した日の翌月10日です。1日でも遅れた場合、罰則規定に従って追徴金と利子の支払いが発生します。
  3. 源泉徴収の対象となる支払いに対し、仮に徴収・納税を怠った場合、源泉税の支払い(プラス罰金+利子)だけでなく、経費性も否認されますので、法人税30%相当プラス罰金+利子が加わります。思いの外、大きな金額になることがあります。2022年現在、当局から指摘が合った場合に、未払いの源泉税を納付すれば、経費性は認めてくれます。ただし、源泉税の未払いに対する罰金と利子は免れることはできません。

下記が源泉徴収の対象となる支払いと税率です。
※通常、ありえそうな支払いのみ抜粋しています。(”タレントへの支払い”等は通常ほとんどないため省略しています)

専門家、コンサルティング、記帳代行、保険仲介、社外役員、税関、保険、株式、ビザ、不動産関係業者へのコミッションもしくはサービス費用、医者・歯医者への診察代であって、相手の年収が3M以下の個人の場合 5%
同上

相手の年収が3M以上の個人の場合

10%
同上
相手の年収が72万ペソ以下の法人の場合
10%
同上
相手の年収が72万ペソ以上の法人の場合
15%
継続的なレンタル料(家賃、車両など) 5%
サブコン 2%
販売員等へのコミッション、リベートなどの支払いであって、相手の年収が3M以下の個人・法人の場合 5%
同上

相手の年収が3M以上の個人・法人の場合

10%

TWA企業に指定された場合、下記が加わります

国内で購入する全ての物品の代金 1%
国内で購入する全てのサービス費用 2%

 

お客様がやること 

  1. 請求書を受け取ったら、上記を参照し、源泉税率を把握してください。
  2. 相手の、会社名、住所、TINナンバーが請求書に書かれているかを確認し、一つでも抜けていたら相手に確認してください。特にTINナンバーは書かれていないことが多いので、必ず確認してください。
  3. 上記源泉税を差し引いた金額を相手に支払ってください。その計算過程を請求書にメモ書きしていただけると、会計の計上時に間違いが減ります。
  4. 源泉徴収票(Form 2307)に署名をして相手に渡してください(基本的に原本でなければなりませんが、現在はPDFで済ませているケースがほとんどです)
    Form2307は通常、会計事務所で作成します。相手の情報、金額などを書いたごく簡単な書類ですので、頻繁にある場合はお客様で作成することも可能です。

注意事項

※業者がTINナンバーを開示しない場合は、ダミーの番号(999-999-999など)にて申告・支払牛化ありません。正式な方法ではありませんのでリスクをご承知ください。
※当方にて相手側のTINナンバーを確認することは致しませんので必ずお客様にてお願いいたします。
※源泉徴収を忘れ満額を支払った場合は、グロスアップ計算にて源泉税を納税します。業者から返金を求める等の交渉は致しません。

 

この税制には実務上、様々な問題を抱えています。例えば

  1. 相手の収入を把握する方法がない
  2. サブコン、とは何が含まれるのか明確ではない
  3. 実際に源泉して支払うことができないケースが日常的に多い。

などです。
日本のような細則集や一問一答集はありませんので、各事業者様が判断をするしかありません。会計事務所も、何が正解かは明確に判断はできません。

しかしながら、経験上、源泉税の総額が、企業規模に対してあまりに少ないことがトリガーになって税務調査に入ることが多いですので、普段からとにかく源泉して支払い総額をなるべく多くしておき、調査対象となることをまずは回避することが重要と思います(源泉税をいくら多くしても、源泉税ですので理論的には損益には影響しません)