厳しい規則よりも受け入れられる規則を

この記事は2003年頃(35歳のとき)に書いたものの転載です。物価、社会情勢等は当時のままですのでご了承ください。

●フィリピン人は「1個買えばもれなく1個おまけ」とか、「カメラを買えばフィルムがおまけでついてくる!」という分かりやすい戦略にのりやすい。
このことは、規則を作る時にもあてはまる。
例えば、遅刻は1回までは多めに見るが、2回目はダメ!
とか
1回の間違いはいいが、2回目は減点の対象
という具合だ。
このようにアロワンス(ゆとりの幅)を持たせてあげることで、『遅刻はただ1回も許さぬ』というような厳しい規則よりも、人々に受け入れられやすい。

●なぜかというと『遅刻はただ1回も許さぬ』という厳しい規則だと、厳しさだけが印象に残り、年がら年中、「この会社は厳しい」「この奥さんは厳しい」という思いだけが募り、不満が先行し、今後、何を言っても「厳しい」という印象だけが残ってしまう。
しかし、1回のオマケという使用者側の譲歩により、とたんに冷たかった規則に血が通い、不満が減る。

●また、もう一つ、フィリピン人はプレッシャーにたいへん弱いという理由もあげられる。家庭も学校も、厳しさのないユルユルの環境で育っているため、プレッシャーというものに慣れていない。(彼らが『試験』というだけで大騒ぎするのはこのためである。)
『タダの1回でもだめ』という規則は、フィリピン人にとっては大きなプレッシャーである。1回のアロワンスがあれば、『ああ、今日は眠いな、遅刻するかな、1回まではOKだから、明日から頑張って起きればいいや』と考えることができる。この逃げ道を非常に好む。1回の遅刻をするまでは、プレッシャーのない状態で生きることができる。
この感覚をフィリピン人は好む。

●彼らを甘やかせることが目的なのではない。受け入れられない厳しい規則を作って不満を抱かれるよりは、ほんのちょっとそれを緩めて、何人にも受け入れられる規則にしたほうが、トータルで考えて生産性が上がると思うのである。