置き場所は経営者が用意したほうが早い

この記事は2003年頃(35歳のとき)に書いたものの転載です。物価、社会情勢等は当時のままですのでご了承ください。

●「電話がかかってきたら、相手の名前と時間をメモしとけって言ってるのに、だめな
のよね 」
と以前、妻がこぼしていた。フィリピンでよくありがちな、メイドの話だ。
しかし、「相手の名前と時間をメモしろ」という指示だけでは、フィリピンでは20点。
それで成果を期待するのは無理というものだ。
カミと鉛筆を買って、電話機の横に置いてやって、やっと70点。
ついでに記入するフォーマットまで作って置いておけば100点。
ここまでやれば、メモを忘れるメイドはほとんどいないだろう。

●雑然とした机の上の書類や、どう分類してよいかわからないパソコンのファイルやおびただしい数のメール。野口悠紀雄の超整理シリーズだったと思うが、「適切な置場書を与えてやれ」と書かれていた。最初に適切な置き場書が用意されてさえいれば、そこに分類するのは割とたやすい、ということだ。

●私のお気に入り空間の一つ、『富士サウナ』で湯船につかっていた。湯船のヘリに、滑り止めマットが敷いてあって、その上にちょこんと洗面器が置いてあった。
サウナの入口には、体にぶっ掛けるための冷水を溜めておく水槽があるのだが、そこにも洗面器を置くための台がこしらえてあった。
一つ一つはたいしたことではないのだが、そういった置き場所があるのとないのとでは、大きな違いがある。対象が不特定多数の場合は特にそうだ。
例えば、冷水用の洗面器を置くための場所が無かったら、ある人は使った後の洗面器を床に放置し、ある人は水槽に浮かべ、ある人は水槽のヘリになんとか乗っけようとするだろう。
次に使う人が、なんとなく「だらしない感じ」を受けてしまう。

●私が事務所で気をつけているのは、スタッフに使わせる「ファイル」や「ノート」のたぐいだ。
所内の重要書類などを、「何かファイルに挟んでそれぞれがきちんと保管しておけ」と言っただけでは、全く思うように動いてくれない。「こういうファイルに保管して欲しいと思うそのファイルそのもの」を人数分買ってきて、「これにこういうふうに保管しろ」という指示までするべきだ。
「打合せや研修には書くものを持って来い」これもだめだ。
ある者は自分のスケジュール帳、ある者はその辺のメモ用紙、ある者はコピー機の中からA4の紙を引っ張り出して持ってくる。
これも、使って欲しいと思うノートそのものを渡さなくてはいけない。
そうでないと、前回の記録を参照することさえ困難だ。

●半年ほど前に、会社のロゴ入りメモ用紙を作った。
たかがロゴ入り用紙だけども、思った以上の効果があった。
作図の重要指示はかならず手書きでそこに書くようにする。末端の作図者も、ロゴがついているもんだから、なんとなく大事な書類のような感じがして、パソコンの側面にマグネットで貼って作業をしたりする。(実際に大事なんだけど)
あがってきた図面を私たちがチェックするときは、そのロゴ入り指示書を資料と一緒に作図者から回収すれば、自分が何を指示したのか思い出せる。
ロゴに色を使わなければたいしてお金もかからないし、こいつはおすすめ。