悪い評価もはっきり伝えよう

この記事は2003年頃(35歳のとき)に書いたものの転載です。物価、社会情勢等は当時のままですのでご了承ください。

●今年の人事考課がやっと終わった。
この仕事を始めてそろそろ丸5年になるが、やっと、本当にやっと、初めて自分で納得のいく人事考課が出来たと思った。
といっても私がやっている人事考課はすごく単純で、全スタッフを下記の17段階に分け、それをインタビューの場で本人に理由とともに手渡すというものだ。
実は評価結果を本人に開示するのはこの5年で初めてのことだった!

17段階とはすなわち
—————–
S   20,000UP リーダー
—————–
A++ 20,000
A+
A       超強力戦力
A-
A– 15,000
—————–
B++ 15,000
B+
B       戦力
B-
B– 13,000
—————–
C++ 13,000
C+
C       見習い
C-
C– 10,000
—————–
D  解雇対象
—————–
である。

●こういう人事考課で難しいのは2点あり、1つは『どういうことを出来る人がどのランクに該当するのかという判断基準を作成し、運用すること』だ。
2つめは、評価と給料を8割がたリンクさせることだ。(残り2割は年功序列分だ)
しかし、私は1つめの、「基準や要件の作成」の方はもう放棄してしまった。
正確に言えば、作ったこともあったが、捨てた。
このあたりのことについては「虚妄の成果主義」の号でも詳しく書いたが、人事考課の判断基準を明文化する作業にエネルギーを使って、デキの悪いものを作ってしまうより、はるかに重要なことがあるのだ。
それは、上層部のスタッフと日ごろから密なディスカッションをし、どういうスタッフがAであり、どういうスタッフがBなのか、という共通認識をはぐくむということ。
つまり、自分は時間厳守のスタッフを評価するのか、いや遅刻なんてかまわないから、とにかく作図が早い人を評価するのか。いやいや、作図のスピードより正確さの方が大事なのか。いやもっとも大事なのはチームワークなのか、といったような共通認識だ。
2つめの「給与とのリンク」は、上の表に書いた通りだ。
こういう給料の基準が見えてきたのも今回が初めてで、実に5年を要したことになる。
この金額については、従業員には公開していないが、インタビュー時に口頭で説明するときがある。従業員にとっては、「ここまでいけばいくらもらえる」ということが明確に分かるというのは、非常に強い動機付けとなる。

●評価の共通認識さえできてしまえば、リーダーを集めて、「今から全員をこの15段階に分類して!」といえば、人事考課はほぼ終わってしまう。
例えば、私がチームワークをことのほか重要視しているのは全員が知っているので、リーダーに任せておけば、「作図が早くてもチームワークを保てない人間」はちゃんと低い評価にしてくれる。

●今回は、たまたまそういうチームワーク悪いちゃんが2名いたので、正社員になりたてだったにもかかわらずその2名には新入社員と同じ「C–」をつけた。
インタビューで、この本人に渡した書類は、下記のようなものだ。
「あなたには勤務態度の改善が期待される。
 今何かしなければ、この会社はあなたにとってハッピーな場所ではなくなる。
 あなたをC–と評価する
—————–
S
—————–
A++
A+
A
A-
A–
—————–
B++
B+
B
B-
B–
—————–
C++
C+
C
C-
C– *You are here
—————–
D
—————–     」
もちろん口頭で、具体的にどういう情報が私の耳に入ってきているかを説明した。
来期の昇給は期待するな、ということも伝えた。
相手は驚いたような顔もしたが、すぐにすんなりと理解し、スッキリした顔でニコニコしながらインタビューの部屋を出て行った。

●この国では、褒めることも非常に大事だが、悪い点をハッキリ伝えることはもっと重要で、「言えばわかる。言わなければ絶対にわからない」
私は面と向かって何かを言ったために相手と禍根を残したことは一度もない。
逆に言わなかったために禍根を残したことは、しょうっちゅうある。
解雇通知でさえ、説明の場ではトップの日本人が出たほうがかえって安全である。
フィリピンとはそういう国だと思う。