蟻の法則2:7:1

この記事は2003年頃(35歳のとき)に書いたものの転載です。物価、社会情勢等は当時のままですのでご了承ください。

●スタッフを優秀なものから順にA、B、Cランクと名付けるとする。
A 熱心に働き、責任感も強く、リーダー的存在
B よく働くが、リーダーシップがあるわけではなく、言われたことを、そつなくこなす。
C 仕事の品質・速さともにあまりよくない。常に誰かの指導が必要。

A、B、Cの数を集計すると、大体、2:7:1になる、というのが『蟻の法則』である。
この法則のミソは、「強力な人だけを集めてスーパー・チームを作ろう!」と、新たな選抜集団を作っても、優秀だったはずのスタッフの中からもやがて、怠け者が出てきて、また2:7:1という割合になってしまうというところである。

●なるほど、会社を見渡してみると、確かにこれに近い割合になるから、この法則は私も正しいと信じている。

●さて、どうしてこの法則を持ち出したかというと、この法則を使うと、Cランクの人をどう扱ったらよいか悩んだときに、いろいろヒントを与えてくれると思うからだ。

●具体的な話をすると、かつて私のいる事務所のスタッフは「2:7:1」ではなく、どう見ても「1:6:3」だった時があった。困ったちゃんが3割もいたということだ。すでに正社員だったため、解雇したくても解雇できない。
こうなると、そのCランクの「3割」が気になって気になって仕方がない。教えたり叱ったりと、このCにかなりの時間を割かれたのであるが、万策尽きてそれでもどうにもならない、とわかった時は「こいつをなんとしても切りたい」という心境になった。こっちが一旦、切りたいと感じると相手もだんだんに空気を感じて、やがて一人、また一人と会社を去っていった。結局2年かかって、割といい感じの割合に落ち着いたのである。
何が言いたいのかというと、会社を見回してみて「1:6:3」というような状態であったら、強権を使ってでもこのアンバランスを是正(=Cを何人か解雇)しようとすることは組織存続のために正しいし、やるべきである。

●次に、「2:7:1」になったときに、依然として残ったCランクの「1割」をどうするかだ。
もし、この法則を聞いたことがなかったら、「とにかくCは切リ続ける」と考えるかもしれない。私は実際、ずっとそう思っていた。Cはどんどん切れば、どんどん会社が良くなるような気がした。切らないにしても、毎年の昇給を限りなくゼロにして、「事実上の解雇通知」を突きつけるという手を使ったりもした。
しかし、よく観察すると、Cの人にはそれなりの役目があって、組織の中ではAがなくてはならない存在であるのと同様に、Cもなくてはならない存在になっていることが結構ある。
例えばCが単純でつまらない仕事をいつでも引き受けてくれるとしたら、これは大変重要な役割である。その間、Aが困難な仕事に専念できるからだ。
また、Cに位置するスタッフというのは、他のスタッフにかわいがられているというケースが非常に多い。つまらない仕事を引き受けてくれるからかわいがられるというのもあるし、単にかわいがられるキャラクターであることも多い。逆に言えば、かわいくないC=性格のよくないCは即刻排除してもよい。
さらに、Cの人は、BやAに教えてもらいながら仕事をすることが自然と多くなるのだが、人に教えるということは自分の勉強になると同時に、気分もなかなかいいものである。つまり、CがいるおかげでBやAが教えることによりいい気分をあじわいつつ、教えるという行為を通して勉強を行い、成長することができるのである。

●つまり、2:7:1まではまっしぐらに進む。2:7:1となった時、まずCの性格をみて、素直でかわいがられているようであればCは残し、さらに、Cの見えざる働きを積極的に評価するべきである。