フィリピン人従業員との泥沼の会話を避けよう

この記事は2003年頃(35歳のとき)に書いたものの転載です。物価、社会情勢等は当時のままですのでご了承ください。

●フィリピン人との会話で、いかに泥沼にハマらないようにするか。
例えば、家の置物が壊れていたのを発見し、よく見ると、こっそり瞬間接着剤で補修されているのを発見したような場合。
奥様とメイドとの泥沼な会話はこのようになる。
「これ、ヒビがはいっているんだけど、壊した?」
「いえ、知りません。」
「でも昨日は壊れてなかったのよね」
「さっき、床に落ちてたので、落ちたときに割れたのではないでしょうか。」
「でもおかしいわね、接着剤で直してあるわね。あなたでしょ?これ直そうとしたの。」
「あ、はい、えっと、ヒビが入ってたから直そうと思って。」
「あなた、さっきは知らないって言ったわよね。」
「あの、ええと、怒られると思ったから。でも壊したのは私じゃありません。」
「あなたじゃないのなら、怖がることないでしょう、どうしてすぐに言わないの。」
「あ、ごめんなさい、ついその、マムがすごく怒ると思って。」
「すぐに教えてくれれば何も怒らないのに、そうやって黙っているから、余計に怒るのよ!本当はあなたが割ったんでしょ!」
「いえ、違います、割ったのは私じゃないです。」
(絶対ウソだ !割ったのもこいつにちがいない!)

●私もよくこういう泥沼にはまりこんで、何度も不快な思いをした。
だけどこういう泥沼は、会話の切り出し方である程度避けることができるのではないか、ということに最近気がついた。
その切り出し方とは、とにかく相手がクロであるという前提で話しかけることと、「じゃあどうして欲しいのか」という結論を最初からはっきり言うことだ。
つまり、「あなたがやったのか?」ということは最初から聞かない。たとえば上記の場合だと、
「こういうものを割ったときは、すぐにいいなさい。あなたに何かを弁償させることは絶対にないから。」
という指示形式に言ってみる。すると
「はい、わかりました。」
とくる。
ただし、相手がクロである確率が70%くらいであることが前提ではある

●もうひとつの例。これは実際にあった話だ。
明日辞めるというメイドが家の電話を勝手に使ってセブの田舎まで長距離電話をかけた。電話機に電話番号が残っていたので発覚したが、通話時間はわからない。本人からの申告ももちろんない。
(ちなみに、辞める従業員が長距離電話をかけまくってから辞めるというのはよくある話で、たいていの企業ではパスワードを入れないと市外にかけられないように設定している。5000ペソくらいの電話代が後から請求されてびっくり!という話はよくある)
「電話、使ったかどうか聞いてみるね」と妻
「やめとけ、使ったのは確実なんだから、そんなの聞いても意味ない。」
「じゃあ、何分かけたのか、聞いてみようよ」
「そんなの、1時間使ったとしたって『2、3分です』って言うに決まってるだろ。」
「なんで言わないのかしらね。」
「理由なんてないよ。使っちゃえ。それだけだろ。」
「電話代、どうすんのよ。あした辞めるのよ。給料からいくら引いたらいいの」
「500ペソくらい引いておくか。」
「1000ペソだったらどうすんのよ。」
「う ん、辞めるやつに説教しても仕方ないしな・・・」
しばらく作戦会議。
結局、10分くらい考えて、本人にこういう風に言った。
「セブに電話したみたいだから、500ペソひいとくぞ。あとで請求書が来てお釣りがあれば田舎に送金するから。いいな。」
「あ、イエッサー。」
本人は最初はびっくりしていたようだが、笑顔まで出して、すんなり了解。ひょっとして1000ぺソ分くらいかけたのか?と思ったりもしたが、それならそれで仕方が無い。
使用人と別れるときは、金銭云々よりも、泥沼にハマらずに笑顔で別れることがなによりも重要なので、これでよい。

●ほかには、携帯電話のTEXTで指示を出しても返事が遅いスタッフには、「なんで返事をすぐにできないのか。」という質問するのではなく、「いつも携帯を握ってろ。」「シグナルのないところには行くな」と言って「イエッサー」で会話を終わらせる。
間違いだらけの図面を書いたグループには、「なんでこんな基本的なことができないのか。」とネチネチやるのではなく、「これ、2時間以内に直せ。メシも食うな。トイレも行くな。」で十分に意図は伝わる。
メイドが子供に勝手にお菓子を与えたときは、「与えてはいけない物リスト」を書いて説明して壁に貼る。

●メイドとか会社の一般レベルのフィリピン人にとって、真実だとか反省だとか謝罪だとか原因だとかは、あまり重要なことではない。彼らにとって一番重要なことは、「怒られずに、その場をなんとか乗り切ること」だ。
だから、YES・NOや理由を説明させる機会を与えてしまうと、彼らは普通、『怒られなくてすむ方の選択肢や説明』を瞬間的に選んでしまう。それが結果的にうそを誘発して、つじつまの合わないPワールドに突入する。それで日本人の血管がブチブチ切れる。
だから思い切って、YES・NOや理由を説明させる機会を相手に与えずに、「はい、わかりました」で答えられるような形式の切り出し方をしたほうが、泥沼にはまらずにすむ。

●ただし、このやり方はこっちが非常に頭を使うのと、ちょっと度胸がいる。
特に「じゃあどうするのか」という指示をハッキリと打ち出さないといけないので、その部分がすごく難しい。
しかし慣れれば20%くらい快適なPライフが送れること間違いなしだ。