フィリピン駐在に向いている日本人

この記事は2003年頃(35歳のとき)に書いたものの転載です。物価、社会情勢等は当時のままですのでご了承ください。

●最後に発行したのが4/20なので、まるまる20日間、何も書かなかった。この間、特にフィリピンについて、目新しいことを考えたということはなかった。(考えたことといえば、今いる会社のウチワのことばかりだ。)

●この間、私の部門のスタッフがまた2名、辞表を出した。ドバイ行きだ。これで7人目である。1人は3年くらい帰ってこないというから、私が来年独立して、一緒に働けたとしても随分後だなぁ、と思い、そっちのことの方が残念だった。
スタッフが会社を辞めていくことに関しては、もはや、なんとも思わなくなってしまった。給料が5倍もらえるところに行かない方が不思議なのであって、そんなことを止める気もないし、方法も無い。
そして、普通のフィリピン人は4、5年で職場を変えるのが普通であって、それ以上いる人は、よっぽど仕事の割に給料がいいか、ある程度の高い地位を獲得してしまったか、つぶしがきかない職業なのか、どれかだろう。

●今の会社で多少なりともスキルが身について、それが理由で、より給料が高いところへいけるのであれば、むしろ嬉しいことではないか。安い人件費を消費するだけではなく、彼らの人生に少しは貢献できたと胸をはることができる。

●ところで、日本人3人で立ち上げた今の事務所だが、大変な騒ぎになっている。
なんと、日本人が11人いる。今月、さらに2名増える。
今までなら、トイレで2人で小便しながら立ち話して決められたようなことも、会議を打って、3週間くらいかけないとなかなか決まらない。
連絡したり意見調整したりするのが一つの仕事だ。たぶん、それこそが自分の仕事だと思い込んでいる社員もいるのだろう。こうやって組織というのは、どんどん大きくなり、効率を落としていくのだなぁ、というのが手に取るように見える。
こういう笑い話を思い出した。「明日、1時から会議を行いますから来てください。」「そんな会議、必要なんですか?よく考えてくださいよ。」「そうですね、では会議が必要かどうか、会議を開いて決めたいと思います。」
あまりに非効率な世界を見て、日本の建物の建設費も、まだまだあと30%は落ちるな、なんて思ってしまった。
そして、いざとなれば力でなんとでもなるフィリピン人より、なんともならない日本人の方が、よっぽど傾向と対策を考えにゃいかんな、などと思ってしまった。

●こんなに多くの日本人が何しに来たのかというと、”他部門への展開”のためである。
つまり、これができたんだったら、あれもやれ、これもやれ、できないわけがないだろう、というわけである。

●日本からアジアのような異文化に進出してくる時に、重要なのは、「どうやるか」ではなく「誰がやるか」。
つまり、それを「やれちゃう」人間が来れば、出来ないと思われることもできるし、逆に変な人間が来ると、出来るはずだったこともできなくなる。
日本の親会社は、誰を送り込むか「だけ」を真剣に考えればよい。だが、現実はそうではないことの方が多いのではないだろうか。
予算だとか、スケジュールだとか、どんな機械を買って、あーしてこーしてということを、その国に行ったことも無い人達が議論を重ね、計算機を叩き、最後に、
「ところで、誰が行くの?」「あいつ、そろそろタイのプロジェクト終わるから、あいつ回せばいいんじゃない?英語もまあ、しゃべれるし。」
みたいな感じで、人選が終わる。そして、失敗した場合は、その国の国民性のせいにされてしまうから、たまったものではない。
ビジョナリーカンパニーも言っている。「適切な人をバスに乗せろ」と。
では、どういう日本人が向いているのだろう。

●私が思うのは
1:学校の先生になりたいと思ったことのある人。
2:短気な人。
最初の、「学校の先生」というのは、その言葉の通り、スタッフに物を教えることが駐在員の仕事の本質だと思うからだ(なかにはそうではない職種ももちろんあると思うが)。例えばあなたが5人のスタッフに適切に何かを教えることができれば、その5人はさらに5人に、あなたの「言葉」を使って教える。これで、5人+25人=合計30人の複製の出来上がりだ。教えることこそが、ノブリス・オブリージュといえる。
次にあげた、短気な人というのは、もちろん自分が短気だから入れているというのもあるが、短気な人は、決断が早い。そして、決断のあとはすぐ実行したくなる。または指示したことが、すぐに結果に現れてこないと、すぐに「なんでだ!」と言って怒る。怒ると怖いから、みんなちゃんとやる。
フィリピン人というのは、のんきだと思っている人が大半のようであるが、実は大変に気が短い。聞いた質問にはすぐに答えて欲しいし、リクエストしたことにはすぐに何らかの反応を欲しがる。彼らは常に即断即決の世界で生きている。
日本人が短気かどうか、というのは簡単に見分けがつく。麻雀をやって、打つのが遅い人はまずだめ。切った瞬間にヤマに手が伸びているくらいの人が、フィリピンに向いている。ゴルフをやって、ショットに時間をかける人もだめ(私はゴルフをやらないので、たぶん)。
また、短気な人というのは、嬉しいときも悲しいときもすぐ顔に出る。この分かりやすさが、フィリピンに良いのである。