社員を喜ばせよう

この記事は2003年頃(35歳のとき)に書いたものの転載です。物価、社会情勢等は当時のままですのでご了承ください。

●フィリピン人にとって、会社が楽しいかどうかということは非常に重要で、日本人は会社を楽しくするために真剣に取り組むべきであるということは、以前、このメルマガで書いたとおりだ。
アウティングやクリスマスパーティはもちろんのこと、毎月何かの催し物をするくらいのペースが必要だ。

●こうした会社としてのレクリエーションとは別に、フィリピン人を喜ばせるために、私が個人的にずっと続けてきたものがある。
それは、日本で電化製品を買ってきて、ローンで売ってあげることだ。
この効果は、絶大である。

●ここのスタッフは全員、私が喜んでそういうことをすることを知っているので、私が休暇で帰国するという予定を聞きつけると、ちょっとした騒ぎになる。入れ替わりたちかわり、何人ものスタッフが近寄ってきては、「SONYのデジカメが欲しい」とか「ハンディカムが欲しい」「PENTIUM2のノートパソコンが欲しい」などと注文を持ってくる。中には、「自転車のタイヤが欲しい」というアホまでいた。

●こうして注文を集めると、毎回40万円分くらいになる。1回では買いきれずに、家と店をタクシーで2往復したこともある。儲けるつもりもないが、為替で損をするのもいやなので、さくらやのポイントは還元するが、5%くらいは水増しして請求する。
支払いは全て月賦で、給料日ごとにだいたい1000ペソ。子供が多くて生活が大変な者は、800ペソくらいに下げる。
多い時は、毎月受け取る支払いが40000ペソにもなった。総額で言えば200万円を超えた。

●一番人気はやはりデジカメで、今までかれこれ30台以上運んだ。だからウチの社員は3メガピクセルクラスのデジカメをほとんどのスタッフが所有している。
面白いのは、新規でスタッフを雇ったときだ。パーティなどで、既存スタッフがデジカメを次々に取り出すと、新規スタッフは「なんでこんな高い物をこの会社のスタッフは全員持っているんだ!?」と、驚く。
私が正社員にしか売らないことも知っているので、6ヶ月の試用期間が過ぎて、正社員になるまではじっと静かにしているが、正社員になったとたん、「僕もデジカメが欲しい」とやってくる。
これがまた、かわいい。

●こういうことをしていると、けっこう面白いことが分かってくる。

  • 転職(海外出稼ぎ)を考えている者は、絶対に買わない。
  • 逆に次々に買う者は、会社を辞める気が全く無い。
  • 給料日のたびに、お金を私の席まで持ってくるので、いいコミュニケーションになる。
  • 電化製品に詳しいと、尊敬される。
  • 特にデジカメは、お互いに写真を取り合って、パソコンに入れたりして、社員同士の絆を深めるのに非常に役に立つ。
  • どうせ使わない眠っているお金が、最大限に生きる。
  • みんな、買った物をとても大切に使う。
  • 私がヘソを曲げると、買ってきてくれなくなってしまうので、みんな素直になる(?)

●こんなことを派手にやる私を、白い眼で見る日本人スタッフもいたと思うが、「俺は自らの金と時間を割いてやっているんだ、何が悪い」というのが私の言い分である。
社内融資制度などで、会社のお金を貸すところはいっぱいあるだろうが、個人のお金を貸し、しかもわざわざ忙しい中を買ってきて手で運んできてくれるというような酔狂な日本人は私くらいなものであろう。
なぜそこまでするのか、と聞かれれば「みんなが喜ぶから」と答えてはいるが、本音はそうではない。
本当の理由は「全員を支配したいから」である。