ここがだめだよ(その3)計算力がない

この記事は2003年頃(35歳のとき)に書いたものの転載です。物価、社会情勢等は当時のままですのでご了承ください。

●フィリピン人は非常に高い語学能力を持っているが、計算力・図形能力は非常に低い。この国の人は、おそらく数字というものに興味が無いのではないだろうかと思うほどである。
例えば
1)25 X 5
暗算しようとせず、計算機を探す。
2)3 X 5 + 2 X 3
掛け算を先に計算するということを知らないので、頭から計算する人がほとんど。
3)3メートルの1/100は何ミリか。
これの計算は建築において屋根の水勾配の計算に使うので、頻出するのだが、なんと「公式を忘れたのでわからない」というエンジニアがいる。もちろん公式などない。答は30ミリ。
4)10月は何日ある?
計算ではないが、ほとんどのフィリピン人は答えられない。今、この原稿を書きながら、そばにいたスタッフ2人に聞いたら、一人は22日かな?いや30日だったっけな?と答え、一人は、違うよ30日だよ、と答えた。皆さんも、周りのスタッフに聞いてみてください。
5)3χ χ
これを3と答える者がいる。ここで期待している答えは2χだ。気持ちはわかるが。。。
6)底辺・斜辺の長さ及び高さが与えられた3角形を作図する方法を説明せよ
初歩の図学の問題だ。事務系ならまだしも、CADを使って図面を描く者ならこれくらいは分かるだろうと思ったら、100人から選抜した10人の中にも答えられる者はいなかった。全員大卒、中にはUP卒もいた。角度がわからなければ書けない、と答える者が多い。フィリピンの大学の建築学科では図学は教えないのだろうか?

●入社テストでは最初に基礎学力の無い者をふるい落とすために、簡単な算数や図形のテストを実施しているのだが、受験者の10%は0点である。
最初は計算機禁止でやっていたのだが、計算機を使わないと計算が出来ない人がほとんどで平均点があまりに低くなってしまい、試験にならないので、携帯電話の計算機能を使うのを黙認することにしてしまった。(ただし、必要な計算といったら、(100-50)/2 程度のものである。)
特に計算機を使ってよい、とは言わないのだが、全員、断りもせずに当然のように携帯電話の計算機を使い出だすことにも驚く。
それでも、65点満点で、平均点は毎回10点。内容は非常に簡単で、「え、こんな試験でいいの?」という感じの試験である。今まで延べ300人くらいに実施したが、いつもほぼ同じ結果だ。

●あるスタッフが、通勤のためにローンでバイクを買う、と言ってチラシを見ていた。頭金がいくらで、毎月の支払いがいくらいくら、という支払いプランがいくつも載ったチラシだった。
その彼に「これ、金利は何パーセントだかわかる?」と聞いてみた。「金利?いや、わからないです。」
単純に支払い総額足して、それを元の値段で割ったら、12ヵ月払いで約20%が利子だった(イジの悪いことに、支払い総額は書かれていないので計算しないと分からないようになっている)。
「これは現金があれば、これだけ払わなくて済むんだよ。」と言ったら、その彼は、どこかからあっさりお金をかき集めて、現金でバイクを買った。

●中層、下層階級になればなるほどこういった基礎学力は落ちるであろう。それが原因で、頭のいいお金持ちに、いいように騙されることも多いはずである。
金額の根拠を確かめもせずに、言われただけの額を支払ってしまったり、知らないうちに不当に高い金利を支払ったり、ということが多いのではないかと思われる。確かめたくても、計算に疎いから、確かめることが出来ない。

●こういう状態なので、業務で、図面に頭を寄せあって、暗算をしながらの会話が成り立たない。事務所を立ち上げた頃は、「小学校の計算ドリルでも買ってきて、毎日やらせるか!」と思ったこともあったが、この計算力不足・思考力不足ばかりは解決不可能だ。今では、特殊な人間以外、計算は出来ないものとして考えている。
小学校の教育方法から変えないとおそらく50年後もこのままであろうと思う。