株式譲渡の注意事項

フィリピンの法人の株式をAさんからBさんへ(もしくはA社からB社へ)譲渡する場合の注意事項です。

必要な手続き

  1. Deed of sale of shareへの署名(株式に未払い分がある場合はDeed of Assignment of sharesと名前が変わります)

  2. 印紙税の支払い 税額はPar Valueの0.75%

  3. キャピタルゲイン税の支払い。簿価での譲渡の場合はゼロ。

  4. Donor’s Taxの支払い。キャピタルゲイン税が発生しないのであればDono’s Taxがかかるはず。
  5. eCARの取得。売り主の所属するRDOにてeCARを申請する

  6. GISの株主氏名を更新し提出

 

関係する税金と税率、納付期限

印紙税、キャピタルゲイン税(もしくは譲渡税のどちらか)が関わってきます。

税金の種類 税率 期限
印紙税 Par Valueの0.75% Deed of Saleが公証された日の翌5日
キャピタルゲイン税 利益に対し15%。
取得価格より高い価格、もしくは「1株あたり利益」より高い価格で譲渡した場合、利益とみなされる。
Deed of Saleが公証された日から30日以内
Donor’s Tax(寄付税) 寄付額から250,000ペソを差し引いた値に対し6%
「1株あたり利益」より低い価格で譲渡した場合、差額は寄付されたとみなされる。
Deed of Saleが公証された日から30日以内

譲渡が決まったら、まずやることは「1株あたり利益」の把握です。
「1株あたり利益」は純資産を株数で割るだけなので、最新の決算書があればすぐに計算できます。
次に譲渡価格との関係で、税金が決まります。

1株あたり利益が下記の時 下記の価格で譲渡すると、 譲渡者の利益は
額面を下回っている 1株あたり利益以下 なし。ただし(1株あたり利益から譲渡価格を引いた額)に対し、寄付税がかかる。
  1株あたり利益と、額面の間 なし。寄付税もなし
  額面価格以上 あり。キャピタルゲイン税がかかる。
額面を超えている 額面以下で譲渡 なし。ただし(1株あたり利益から譲渡価格を引いた額)に対し、寄付税がかかる。
  額面以上で譲渡 あり。キャピタルゲイン税がかかる。

公証の日付が全て

通常、Deed of Saleの書類には日付は記載しませんので、譲渡が行われた日は公証の日付によって判断されます。
注意しなければならないのが印紙税の納付期限です。翌月5日ですのでうっかり30日に公証をしてしまった場合は、わずか5日後となり、納税が極めて困難になります。従って月末近くの日付で公証しないように注意しなくてはなりません。
日本で公証をすることも多いと思いますが、その場合は郵送などの手間がありますので、特に注意しなくてはなりません。

キャピタルゲイン税と寄付税は、公証の日付から30日後が納付期限です。譲渡を決定した取締役会議の日付や、実際に金銭の授受が行われた日付などは関係がありません。とにかく公証の日付で判断されます。
従いまして、納付額はおよそいくらで、いつ、誰がどういった手順で納税するのかを全て打合せで決めてから、公証を行うという段取りになります。公証をしたら最後、タイマーが作動しますので公証は慎重に行わなくてはなりません。

TINナンバー取得に注意

新たに株主になる人もしくは法人が、フィリピンの納税者番号(TINナンバー)を持っていない場合、新たに取得しなければなりません。ただしここに大きな地雷があります。
TINナンバーを取得するには、取得する必要が発生した書類を公証して、税務署に提示しなければなりません。今回の場合、Deed of Saleがその書類にあたります。TINナンバーを取得するためにDeed of Saleをうっかり公証してしまうと、そこで納付期限のタイマーが作動しますので、TINナンバーの取得はギリギリまで行ってはなりません。

CARとは

CAR(Certificate of authorized Registration)についてとは、株式の譲渡を証明する証明書のことで、BIRで取得します。
取得には3~4ヶ月かかり、会計事務所や弁護士事務所の代行費用もやや高額な傾向があります。
取得しないことによるペナルティは過去に発生したことはありませんが、将来、ペナルティが発生しないことを保証するものではありません。

もし期限を過ぎてしまったら

うっかり公証をしてしまい、税務署が納税計算書を作成したときはすでに遅延となり、多額のペナルティを課されることがあります。こうなったら素直にペナルティ込みで納税するか、もしくは再度、公証を行うという方法が使えることがあります。
契約金額が多額だと、フィリピンの公証費用も多額になることがあります。日本での公証は契約金額には無関係で11,500円(海外向け私文書)ですので、このことは知っておいても良いでしょう。